Recent Volcanic Activity in Mt.Kurofu, West of Asama Volcano Estimated from Pioneer Vegetation

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  • 浅間山西部・黒斑山の先駆植生から推定される新期火山活動
  • アサマヤマ セイブ クロ フヤマ ノ センクショクセイ カラ スイテイ サレル シン キ カザン カツドウ

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1.はじめに 黒斑山は浅間山の西部に位置し,約2.3万年前に火山活動が終了した浅間山の外輪山である.黒斑山は2.3万年以前にできた古い火山体であるため,植生遷移が進めば極相林(本地域ではシラビソ,オオシラビソ林など)になるはずである.しかし,黒斑山西斜面の数ヶ所には,クロマメノキ・ガンコウラン・コケモモなどの遷移初期にあたる植生が存在する.また,そこは岩塊地・砂礫地(以下このような場所を砂礫地と呼ぶ)になっており,その周辺部には樹高が低く偏形したカラマツが生育している.このことから,比較的近い時期に何かしらの小規模な撹乱があり,小規模ギャップ(砂礫地)が形成されたと推定される.本稿では,この砂礫地の形成時期及び形成要因を地形・地質・砂礫地の分布とカラマツの樹形・樹高・胸高直径・樹齢などの調査から検討した. 2.研究方法  1947年(米軍撮影,縮尺4万分の1)と2006年(国土地理院撮影,縮尺2万分の1)の空中写真を用い,砂礫地の分布・植生分布を比較した.また,砂礫地の分布・礫径・風化被膜の調査と砂礫地周辺のカラマツの偏形樹の樹形・樹高・胸高直径・樹齢の調査を行った. 3.結果・考察 3-1.黒斑山の砂礫地の分類 黒斑山西斜面に存在する砂礫地は,地形・礫種・礫径・風化被膜などの違いからA(Loc.1~3),B(Loc.4),C(Loc.5・6),D(Loc.7・8)の4つに分類した.Aは傾斜が緩やかで,比較的大きな岩塊が見られ,礫種や風化被膜の厚さが似ている.また,大きな岩石に流理構造がみられることから,局地的な火山活動があったと推定できる.Bは傾斜がやや急で,黒斑山の活動期のものである岩石が見られ,比較的小さな傾向にある.  Cは傾斜が急で,岩石の大きさ・風化被膜の厚さが似ている.また,尾根から谷筋にかけての移行帯にあたる.Dは傾斜が緩やかで,岩石の大きさと風化被膜の厚さが似ている. 3-2.カラマツから推定される砂礫地の形成時期 1947年と2006年空中写真を比較すると,植生の遷移が進み,砂礫地の分布範囲が縮小し,地形・傾斜の違いにより遷移の速度が異なることが明らかになった.カラマツの偏形樹の樹齢は一番古いもので,186年になるものが存在する.富士山の宝永火口・御庭では,カラマツが定着するまでに約100~300年要しており,この砂礫地周辺では約300~400年くらい前からカラマツが定着し始めたと考えられる. 3-3.砂礫地の形成要因 砂礫地の形成要因は詳細には明らかにならなかったが,小規模な火山活動(水蒸気爆発・噴気・噴火),侵食に伴う土砂の移動などの複合的な要因が考えられる. 4.おわりに 黒斑山は約2.3万年以前に火山活動を終えた火山だと思われてきたが,遷移初期にあたる植生の存在から,ごく最近の時期(約300~400年前)に小規模な火山活動をした火山であると考えられる.このように比較的最近の時期に火山活動があった可能性がある限り,火山防災上,砂礫地の成因を明らかにしておく必要がある.また,このような火山植生から火山活動を検討することは他の火山でも行なうことが可能であり,火山活動史を議論する際,岩石など地形・地質的な観点からだけではなく,植生の遷移及び先駆植生の分布も含めて議論を行なうことによって,火山の噴火史をまた違う視点から見直すことができるかもしれない.

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