都市土壌の分類に向けた土壌硬度の鉛直分布データの有効性

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  • Usefulness of vertical distribution of soil hardness as a criterion of urban soil classification

抄録

1. はじめに<BR>  Bockheimが1974年に米国土壌学会において初めて都市土壌(Urban Soils)を「都市および都市近郊において,混合,埋立て,あるいは異物を混入させて創られた厚さ50 cm以上の非農業,人工的な表層をもつ土壌物質(USDA, 2005)」と定義したが,国内外の土壌分類法では都市土壌の明確な分類基準は確立されておらず,耕作地や造成地などの土壌と共に分類されるのが一般的である.しかし,都市土壌がおかれている環境は,人間活動の影響を強く受けた環境であり,農林地土壌のおかれる環境とは異なる.また,土壌生成分類論の基本的概念に基づけば,土壌は様々な環境条件によって生成される(浅海編,1990).したがって,都市土壌には都市環境の特殊性を考慮した分類基準が必要だと考えられる.そこで,本研究では平山(1978)において「人間活動の影響が強いほど堅い土層になり,土壌硬度が人間活動の土壌への影響の指標になる.」と述べ,人間活動の影響を表層の土壌について議論した.このことから,本研究では,造成や管理などの人間活動がもたらす固有の土壌生成過程と土壌硬度の鉛直分布特性との関係を明らかにする.そして,土壌硬度の鉛直分布の特徴から都市土壌硬度を用いた都市土壌の評価と分類の有効性について考察する.<BR> 2. 研究手法<BR>  本研究で対象とする都市土壌は既存の都市土壌の定義をふまえたうえで,さらに土壌調査が可能な場所として「都市公園における土壌」を対象とする.これは,土地利用の履歴や造成工事の記録等の人間活動の記録が残されている場所であることが望ましいためである.本研究では,環境省所管の東京都千代田区北の丸公園を対象として,公園内134地点で鉛直方向1mまでの土壌硬度計測と代表地点において簡易断面調査を行った.硬度の測定には,長谷川式土壌貫入計(H-100 ダイトウテクノクリーン)を用いてSOFTNESS(cm/drop)として計測結果をグラフ化した.<BR> 3. 結果と考察<BR>  公園内134地点で得られた鉛直方向の土壌硬度プロファイルの形態から土壌硬度を3グループに分類した.そして,電子化した古地図や造成履歴の資料と土壌硬度の測定地点をGISソフト(ArcGIS9.2 ESRI)によって重ね合わせ,土地利用や造成履歴,利用・管理形態と土壌硬度形態の関係を検討した.<BR>  その結果,北の丸公園の土壌硬度の形態は,極度に固結している層や,固結層に挟まれた軟らかい層がみられるなど,農耕地土壌で一般的にみられるものとは異なる形態を示すことがわかった.次に,GISソフトを用いた分析から,固結層は建物の圧密や造成時の重機の圧密,公園利用者の踏圧によって形成され,軟らかい層は盛土や植裁のための客土や公園管理の過程で形成されたことが分かった.<BR>  都市土壌には固結層の形成という特異な生成過程がみられる.都市公園を対象とした本研究により,鉛直方向の土壌硬度形態と,土地利用履歴,造成手法,管理手法,利用環境との対応関係が明瞭に示された.このことから,土壌硬度の鉛直分布は人間活動という環境因子を考慮した都市土壌の評価・分類を検討するのに有効な指標であると考えられる.<BR> 【引用文献】United States Department of Agriculture -Natural Resources Conservation Services (NRCS), 2005. Urban Soil Primer.[http://soils.usda.gov/technical/ classification/ taxonomy/, pp61-65.>]/ 浅海重夫編 1990. 『土壌地理学-その基本概念と応用』. 古今書院./ 平山良治 1978. 自然教育園の土壌図. 自然教育園報告. 8: 39-59.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672195712
  • NII論文ID
    130007017931
  • DOI
    10.14866/ajg.2011s.0.132.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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