和歌山県における二次保健医療圏ごとの医療需要実態と供給体制の評価

書誌事項

タイトル別名
  • Evaluation of medical demand-and-supply balance of each secondary medical district in Wakayama prefecture

説明

I はじめに<br> 近年,我が国の地域医療は,医療を担う人材の不足・偏在,医療の提供体制の機能分化や連携の不足が危惧されている。医療ニーズに対して必ずしも効率的で最適なサービス提供体制となっておらず,一方で過剰需要が生じ,他方で必要なサービスが十分に提供されていないのが現状である。さらに,日本の人口構成は急激に変化しており,2025年に向けて,75歳以上の人口は増加し続ける一方,0~64歳の人口は減少し続け,その変化にともなう医療需要に対して現状の医療提供体制で対応することは困難であると見込まれている。<br> このような状況のもと,2014年6月18日の参議院本会議で「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(医療介護総合確保推進法)が可決,成立した。これにより各都道府県は,地域医療ビジョン―医療機関からの病床機能報告(自己申告)を受け,一般病床が担っている医療機能(急性期,亜急性期,回復期など)の情報を把握・分析し,その情報をもとに,地域全体として必要な医療機能がバランスよく提供される体制を構築していく仕組み―の策定が求められる。<br> そこで本研究では,和歌山県における二次保健医療圏ごとの医療需要実態と提供体制を数量的・客観的に評価し,医療提供体制の再構築に向けた指針を得ることを目的とする。<br><br>II データと分析手法<br> 医療需要実態は,主に,社会保障・人口問題基本調査,患者調査,受療行動調査によって把握する。医療提供体制の把握には,地方厚生局の届け出情報,医療施設調査,病院報告を用いる。<br> 分析手順としては,先ず,性・年齢階級(5歳毎)別に人口の推移および推計値を利用し,これに患者調査における入院患者の受療率を掛け合わせて患者数を推計する。次に,都道府県や二次保健医療圏をこえて移動する患者の影響を勘案し,患者流出入率を反映させて医療需要を把握する。これに対して,医療供給体制については,病床機能別に既存病床数を把握し,現状の需給バランスを評価したうえで,将来の需要推計に対する必要病床数を算出する。<br><br>III 二次保健医療圏ごとの医療需要実態と供給体制<br> 和歌山県は,県庁所在地である和歌山市を含む和歌山保健医療圏に,県総人口の43.5%が集中している(平成22年国勢調査)。総人口は昭和60年をピークに,それ以降は減少傾向にあり,出生率は全国に比べて低率で推移している(厚生労働省「人口動態統計」)。平成20年患者調査および平成22年病院報告によると,医療施設が集中している和歌山保健医療圏に入院患者が集中する傾向にあり,特に,那賀および有田保健医療圏からの流入が目立つ(表1)。<br> これに対する医療供給体制は,医療施設調査によると,和歌山県全体としては,平成5年以降病院数は微減,診療所は微増傾向にあり,人口10万人対比でみると全国の平均値を大きく上回る。医療従事者数についても同様であるが,二次保健医療圏別にみると,人口10万人対比の数値は和歌山保健医療圏を除く6圏域で,全国(219.0人),和歌山県(259.2人)を下回っているのが現状である。<br><br>IV 5 疾病・5 事業ごとの分析<br> 医療の需給バランスは,医療法第 30 条の 4 第 4 項の規定に基づいた,5 疾病・5 事業―がん,脳卒中,急性心筋梗塞,糖尿病及び精神疾患の 5 疾病並びに救急医療,災害時における医療,へき地の医療,周産期医療及び小児医療の 5 事業―ごとに調整していくことが求められており,人口構成や疾病構造をはじめとする地域の諸条件にあわせて最適化していかなければならない。<br> これを踏まえたより詳細な分析結果については,発表の際に報告したい。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672205696
  • NII論文ID
    130005490076
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100284
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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