都市化により拡大する道路舗装下土壌の特徴付け

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  • Characterization of soils beneath pavements increase in urbanization

抄録

はじめに<br> 都市域では、土壌は劇的に人間によって改変される。都市土壌の特徴として、圧密による硬度の増加や、水分および養分供給の低下、高いpHや有機物含量の低さなどが指摘されている。また、人間による土壌改変の一例である土壌被覆は、都市生態系内の土壌機能に太陽放射吸収量や水の浸透量低下や表面流去水の増加、ガス交換の妨害、植生被覆の欠如といった負の影響を与える。このように都市化は様々な悪影響を生態系に与えるが、人間に対して快適で便利な居住地を供給するために、都市面積は拡大し続けている。輸送手段の確保やインフラストラクチャーの整備のため、道路の建設は都市の発展には不可欠である。都市の拡大により道路面積は拡大しており、その舗装形態も様々である。土壌は地上と地下の物質循環において重要な役割を果たしており、舗装は土壌を介した物質循環と土壌機能に影響を及ぼす。そして、この影響により特有の土壌が生成されていくと考えられる。そこで、本研究はアスファルト舗装による鉱質土壌への影響とそれにより引き起こされる土壌生成作用を明らかにし、その土壌生成過程を論じることを目的とした。<br> 調査地と研究方法<br> 一般的なアスファルト舗装の構造は、不透水性のアスファルトと砕石の混合物であるアスファルト表層と基層、および支持力の大きい良質な材料である砕石を用いた砕石層で構成される。砕石層は石灰での安定化処理や時としてリサイクル材のセメント、コンクリートを混ぜた上層路盤と支持力の小さい安価な材料を用いる下層路盤から成る。さらに、路盤下1mが舗装時に支持力を要求される鉱質土壌部分であり、路床と呼ばれる。また、交通量の少ない車道や歩道にはアスファルト基層を設けず、路盤も1層のみの簡易舗装を施す場合もあり、舗装の厚さは交通荷重、路床強度により決定される。調査地点は道路密度データをもとに被覆率の異なる地点を選択した。東京都八王子市の散田町、石川町、南大沢、東京都町田市の図師と山崎、神奈川県相模原市緑区の合計6地点で調査を行った。アスファルト舗装の断面はアスファルト層、砕石層(路盤)、鉱質土壌上層(路床)、鉱質土壌下層(路床)に分けた。鉱質土壌はレキ含量を元に層位分けし、層位ごとに試料を採取した。対照試料として近隣の未舗装土壌の試料も採取した。 新設舗装の試料は道路建設工事(散田町)や下水道管交換(石川町)時の道路復旧用の材料から採取した。試料採取地点は南大沢を除いて土壌図で黒ボク土の分布域に位置し、南大沢は周囲に黒ボク土が分布する人工改変土に位置していた。<br> 採取した試料のレキ含量、pH、電気伝導度、元素組成、全炭素、全窒素、全硫黄、無機態炭素含量、炭素安定同位体比及び非晶質のアルミニウム、鉄含量を測定した<br> 結果と考察<br> 南大沢以外の鉱質土壌下層の主な化学性は対照の未舗装土壌および関東の黒ボク土の化学性と類似性が認められた。但し、電気伝導度は舗装下の鉱質土壌下層では未舗装土壌に比べ有意に高く、舗装による影響と考えられた。鉱質土壌上層は鉱質土壌下層と比べて高い電気伝導度、pH、カルシウム含量、無機態炭素含量と低い非晶質のアルミニウムと鉄含量に特徴づけられていた。砕石層は鉱質土壌上層に比べ高い電気伝導度、pH、カルシウム含量および無機態炭素含量を示しており、非晶質のアルミニウム、鉄はほとんど含まれていなかった。アスファルト層はpH、カルシウム含量、無機態炭素含量は高く、電気伝導度は低く、砕石層と同様に非晶質のアルミニウム、鉄はほとんど含まれていなかった。炭素安定同位体比は新設舗装の砕石層が最も高く、その下の鉱質土壌層は深くなるにつれて、未舗装土壌の値に収束した。<br> 本研究の結果から、アスファルト舗装は鉱質土壌に対し新規舗装材料としてカルシウムの供給、上層への異質物質混合、無機態炭素集積、アルカリ化、水溶性塩類供給の作用を引き起こしていると推測された。また、散田町の新規舗装断面とその他の数十年に及ぶ時間を経過した古い舗装断面との比較から、電気伝導度、Ca含量、pH、無機態炭素含量はカルシウムの水溶性成分溶脱により、低くなることが示唆された。<br> 本研究で示唆されたアスファルト舗装による土壌生成作用はほとんどの道路において生じると考えられ、舗装形態や舗装厚、舗装経過年数、表面状態、交通量、微地形、基盤土壌などの影響により、舗装下の土壌生成過程は変化すると予測される。また、土地の再開発や道路舗装下のインフラの維持管理、道路補修などによる張替工事により、新規舗装材料が再度供給される。道路舗装下の土壌の特徴と道路の状態やその地点の属性、工事頻度などの土地利用状況の関係を整理することにより、都市化による土地被覆が引き起こす環境変遷を土壌の観点から捉えることが可能であると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672245376
  • NII論文ID
    130005490010
  • DOI
    10.14866/ajg.2015s.0_100307
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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