New image of volume of volcanic sector collapse at "Old" Yotei volcano, southwestern Hokkaido, from the viewpoint of hummocky topography

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  • 流れ山地形からみた古羊蹄火山の山体崩壊量

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はじめに<br>火山体でみられる特有の削剥現象のうち,巨大山体崩壊は火山体そのものやその下流域の長期の地形発達を規定しうるという点で重要視されてきた.Yoshida et al. (2010)は,そうした巨大山体崩壊が「どれほど巨大であったのか」を定量的に明らかにするうえで,岩屑なだれ堆積面の縦断方向における流れ山のサイズ分布が,山体崩壊の量的規模(体積)や岩屑なだれの流動性を反映した結果であることを指摘した.Yoshida et al. (2012)においてはさらに事例が追加されて,流れ山の分布特性から山体崩壊量や岩屑なだれの流動性の推定を可能とする経験式が構築されている.その後,磐梯火山における2つの巨大山体崩壊やフィリピン・イリガ火山における事例などで,既知の山体崩壊量,もしくは崩壊山体の崩壊前後における地形変化から求められた山体崩壊量と,流れ山の分布特性からみた山体崩壊量との対応関係が検討されることを通じて,その経験的関係の蓋然性が高められてきた.そこで本研究では,山体崩壊量が未知の(もしくはきわめて大まかにしか把握されていない)事例について,流れ山の分布特性からみていかなる巨大山体崩壊であったのかを検討する. <br><br>研究対象<br>本研究では,北海道南西部に位置する羊蹄火山(標高1898 m)をとりあげた.羊蹄火山は比高1500 m以上,底径10~11 kmの日本では比較的大型の安山岩質成層火山であり,均整のとれた円錐形の火山体を有している.火山原面が広く残存しており,削剥のあまり進んでいない「若い」火山体である(上澤ほか,2011).このように現在の火山体には巨大山体崩壊の発生を示唆する崩壊地形を認められないが,西麓にはひろく岩屑なだれ堆積面が分布し,多数の流れ山地形が見出される.江草・中川(2001)や江草ほか(2003)によれば,この岩屑なだれをもたらしたのは現在の羊蹄火山ではなく,その下に埋もれる古羊蹄火山であるとされる.江草ほか(2003)は岩屑なだれの最大到達距離に基づいて,崩壊前の古羊蹄火山が標高1000~1700 mに達したとしている.これは,古羊蹄火山の岩屑なだれについても既往の岩屑なだれが示す等価摩擦係数(比高;Hに対する最大流走距離;Lの比)の範囲内におさまるとの仮定下で推定されたものである.古羊蹄火山の山体崩壊量について詳述する既往研究は皆無といってよく,第四紀火山カタログ委員会編「日本の第四紀火山カタログ」(http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm;2014年7月8日最終閲覧)において0.72 km3との記載があるほか,井口(2006)がまとめた巨大山体崩壊・岩屑なだれのリストにおいて1 km3以上と推定されるもの,として示されるに過ぎない. <br><br>結果と考察<br>本研究では,空中写真判読によって羊蹄火山西麓において297個の流れ山を認定し,Yoshida et al. (2012)の方法でそれらの縦断方向分布特性を次のような回帰式であらわした.<br>A = αexp (-βD) (R=-0.948)                            (1)<br>ただし,Aは流れ山の面積(m2),Dは給源位置(現在の山頂火口中心に定めた)からの距離(m)である.そして,山体崩壊量の推定に用いるα値は170286.4,岩屑なだれの流動性評価の推定に用いるβ値は0.000429と算出された.このα値およびβ値とYoshida et al. (2012)の経験式とから,古羊蹄火山の崩壊直前の山頂高度は,1600 m~1700 mであった可能性が高いこと,山体崩壊量は約1.4 km3と推定されることがわかった.前者は江草ほか(2003)による推定の範囲内である.後者は「第四紀火山カタログ」に記載される値の2倍であり,大きく異なる結果となった一方で,井口(2006)の見積もりとは矛盾しない値となった.前述のように,既往研究における山体崩壊量についての吟味は必ずしも十分でないことを踏まえれば,本研究によって得られた約1.4 km3との値を,古羊蹄火山における巨大山体崩壊の体積を示すものとして位置づけることが可能であろう. <br><br>文献<br>井口(2006)日本地すべり学会誌,42,409-420.;上澤ほか(2011)火山,56,51-63.;江草・中川(2001)日本火山学会講演予稿集,2001,84;江草ほか(2003)日本火山学会講演予稿集,2003,57;Yoshida et al. (2010) The Quaternary Research (Tokyo), 49, 55-67.; Yoshida et al. (2012) Geomorphology, 136, 76-87

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672322432
  • NII Article ID
    130005481487
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_105
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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