北陸地方におけるジオパークのおもしろさは何か

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書誌事項

タイトル別名
  • What is interest in Geoparks of the Hokuriku district;
  • -共通性と違い-
  • common and different features

抄録

日本海形成の大地の歴史を活かしたジオストーリー北陸地方のジオパークの共通した性格の1つとして、日本海に面した土地であることがあげられる。この日本海の形成はそれぞれのジオパークで大地の歴史を語るうえで重要な役割を果たしている。しかし、ジオストーリーにおける日本海形成の歴史の役割には各ジオパークで少し違いがみられる。たとえば、恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークでは、アジア大陸の一部であった日本が火山活動や地殻変動によって大陸から分離するストーリーが、恐竜化石を通じて語られており、日本海形成がジオストーリーの目玉となっている。一方、白山手取川ジオパークでは、日本海形成の歴史は「水の旅」や「石の旅」の土台となるものであり、大地の歴史の結果として生まれた日本海は水の旅の源として取り扱われている。日本海で発生した雲は日本の脊梁山脈の西側に雨や雪をもたらし、それらが大地を削り、石を運搬し、運ばれた土砂が堆積する。そのような「水の旅」と「石の旅」の基盤として、日本海形成が補足的に語られてきた。糸魚川ジオパークでは、フォッサマグナの西側に断層が通り、日本列島の形成を示す地質や地形がジオストーリーとして盛り込まれており、そこでは日本海の形成もヒスイの形成も大地溝帯と関連づけて語られている。他方、ジオパークの審査を現在受けている立山黒部は日本海形成以前の38億年前(大陸と陸続きの時代)と、日本海形成で生じた深度1000mの富山湾、さらに標高3000mの立山連峰までの高低差4000mの空間のなかでジオストーリーが組み立てられており、それらのストーリーにおいても日本海形成のトピックは重要なイベントであった。4つのジオパークにおいて日本海形成の活かし方に差異があるのは、それを主役として扱うのか、脇役として扱うかである。実際、恐竜渓谷ふくい勝山ジオパークは日本海形成が主役であり、他のジオパークでは比較的脇役に徹している。 日本海に関連した地域資源を活用したジオストーリーいずれにしても、日本海に関連した地域の性格がジオストーリーにおいて重要な役割を担うアクターになっていることに変わりない。たとえば、白山手取川ジオパークでは、日本海を源とする「水」が主役であり、その上流から下流までの旅のストーリーなかで、日本海は水の発着地になっている。このジオパークでは、日本海までの水の旅に関連した地域資源(扇状地や段丘などの河川地形とそこでの防災の歴史、あるいは水利と水稲作や酒造業などの人間活動)を組み合わせてジオストーリーが構築されている。つまり、日本海は「水」の旅の背景や脇役として重要な役割を果たしてきた。一方、糸魚川ジオパークでは、持続可能な地域社会の実現を目指すジオパークであるため、ジオサイトである地形・地質の特徴や貴重性とともに、それらを基盤とした地域の歴史・文化や産業・経済をジオサイトと結びつけたジオストーリーが努力して構築されてきた。それが、「東西文化の出会うまち」である。このような東西文化の交流を支えたものの1つが交通であり、日本海の海運と日本海から内陸に運ばれた「塩」の道であった。確かに、糸魚川を通る東西を分ける地形・地質学的な裂け目が主役であるが、その裂け目が東西文化の裂け目にもなるとと考えると、東西文化を交流させる交通路や日本海も重要であり、ジオストーリーの主要な要素となる。北陸地方のジオパークの面白さ北陸地方のジオパークの面白さは、ジオパークの材料はほぼ同じであるが、それらの料理の仕方により(何を主役にし、何を脇役にするかによって)、味わいが異なるジオパークがつくられてきたことである。味わいが異なるジオパークが東から西に(あるいは西から東に)移動することで体験できることも面白いし、その面白さを体験することは北陸新幹線の開通によってさらに促進されるだろう。他方、北陸地方のジオパークのさらなる発展のためには、4つのジオパークの明確な差別化が図らなければならないし、それぞれのジオパークの不足した部分を他のジオパークが補完しあうようなシステムや仕掛けの構築も必要になるだろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672366592
  • NII論文ID
    130005481443
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_151
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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