小学校における地誌学習の試み

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タイトル別名
  • Attempt of Regional Geography Learning
  • 板橋第六小学校研究開発学校の実践から
  • From the practice of developmental research in Itabashi sixth elementary school

抄録

1.はじめに <br>  板橋第六小学校は、文部科学省研究開発学校として平成17(2005)年度より3年間、新教科の開発研究を行ってきた[1]。  研究開発主題を『小学校の「社会科」のあり方を見直し、「地理・歴史科」「地理科」「歴史科」の教科を新設した場合の教育課程、指導方法及び教材等についての研究開発』とし、「国際化、グローバル化に対応した新時代の教科を創造すること」「世界の中の日本を意識できる教科とすること」「あふれる情報を主体的に理解、評価、解釈しながら扱える能力を育成できる教科とすること」などを柱として、新時代に期待される社会科に変わる教科の在り方を模索した研究である。 「学習内容が多岐にわたり複雑化している現状を解決したい。」「教科の基礎知識を十分に定着させたい。」「地図等の資料活用能力を、十分に定着させたい。」「国際社会に生きる国際人としての自国の理解を定着させたい。」などの願いをもち、第3、第4学年に「地理・歴史科」、第5学年に「地理科」、第6学年に「歴史科」という新教科を設置し、新しい学習の形を模索した。 実践から数年が経過しているが、小学校における地理学習に取り組んだ研究主任の立場として、小学校段階での「地誌学習」について改めて振り返ってみる。<br>2.板橋第六小学校新教科の地誌学習 <br>  板橋第六小学校の新教科における地誌学習は、主として3・4年の「地理・歴史科」5年の「地理科」で扱った。特に5年「地理科」では、日本列島を7地方に分け、地理的、地形的な特色とともに、地方の産業、特色、現代社会における問題等を扱う新しい単元を構想、開発した。(1)北海道地方 →「北の大地 北海道」(自然環境、特色、農家の工夫)、(2)東北地方 →「自然を生かした農業 東北地方」(自然環境、特色、農家の工夫)、(3)関東地方 →「わたしたちの関東地方」(自然環境、特色、首都圏の結びつき)、(4)中部地方 →「工業のさかんな中部地方」(自然環境、特色、海外との結びつき)、(5)近畿地方 →「美しい環境や伝統を守る近畿地方」(自然環境、特色、伝統や環境を守る努力)、(6)中国・四国地方 →「巨大橋で結ばれた中国・四国地方」(自然環境、特色、結びつき、くらしの変化)(7)九州地方 →「東アジアにつながる九州地方」(自然環境、特色、結びつき《交流》)、(8)まとめ →「見直そう 日本の国土を」(自然環境、結びつき、人々の生活)*新教科は各学年とも、メイン単元と関連をもたせつつ地図活用の技能を高める「地図単元」という単元を含んでいる。平成20(2008)年の中学校学習指導要領では、社会科地理的分野の扱いが大きく変化した。それまでの方法知を中心とした学習から、内容知としての地誌学習を中心とするものへの転換といえるが、平成19年度に終了した板橋第六小の研究における新教科単元の構成は、この変化を先取りする、同じ方向性をもった提案であったと言える。<br>3.新教科の実践例(一部)<br>  ○5年 地理科「自然を生かした農業・東北地方」 従来の産業学習の中での人々の工夫や努力を重視すると同時に、地方の自然地理的な特徴と、人々の暮らし、産業との関係等についても重要な学習であると位置づけた。ここでは、さくらんぼの産地、山形県を取りあげ、扇状地などの地形の様子、そのでき方について、映像や図を使って学習する場面を導入したり、雨温図などの具体的な資料を扱い、地方の気候の様子が理解出来るようにした。児童は、地形や気候等と、その地方の自然地理的な特色が、農業と密接に結びついていることを、実感をもって学んでいった。<br>4.おわりに <br>  3年間の研究は、新教科年間指導計画「板六プラン」の発表という形で終了した。「新教科の学習が好き」と感じる児童数の増加、地理的事象を扱った調査問題についての正答率の向上等、成果が見られたが、新教科カリキュラムの評価には継続的な実践と検証が必要である。また、こうした取り組みの充実のためには、小学校、中学校、高等学校間の連携、協力が不可欠である。「小・中・高をつなぐ」というテーマを意識しつつ、今後も研究に関わっていきたいと考える。<br><br>[1] 成果の全体は次に報告した。関口達紀 2012 板橋第六小学校における「地理・歴史科」の取組の成果.新地理 60(1):42-46.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672376448
  • NII論文ID
    130005481458
  • DOI
    10.14866/ajg.2014a.0_159
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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