大都市圏外縁部における地域の高齢化とその持続可能性について

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タイトル別名
  • Aging of Local Community and its Sustainability
  • -群馬県桐生市を事例に-
  • : Case Study of Kiryu-city, Gunma

抄録

1.はじめに 大都市圏外縁部においては、郊外化の終焉やこれにともなう都市圏の「縮小化」傾向のもとで、過疎化・高齢化が急速に進行している(江崎2006;井上・渡辺編2014)。また人口や産業の大都市への一極集中が進み、地方都市においては、若年層の流出によって「消滅可能性」までもが指摘されている(増田2014)。北関東の一都市である群馬県桐生市もこのような都市のひとつとして挙げられているが、かつては日本の一大織物産地として栄え、群馬県内では高崎、前橋に次ぐ人口・経済規模を誇る都市であった。主力産業の衰退、そして人口減少、少子高齢化を経験するこのような地方都市においては、これまで成長路線の視点から、従来の復権を目指すような経済活性化や人口再生産の議論がなされてきたが、平常化(型)の議論は少なかった。そこで本研究では、群馬県桐生市を事例として、産業構造の変化や高齢化にともなう地域変容、住民の特性や地域との関わりの分析・検討から、大都市外縁部に位置する都市・地域の持続可能性について考察することを目的とする。 <br> <br>2.分析方法 本研究では、高齢化する地域の持続可能性についての分析を、以下の方法で行なった。イ)地域の高齢化・空洞化問題への取り組みを行う行政や自治会への聞き取り調査。ロ)当該地域に暮らす住民へのインタビュー調査の結果を踏まえた個別事例の検討。ハ)当該地域に暮らす住民の世帯構成、生活実態、地域との関わり方やコミュニティへの認識を把握するためのアンケートの実施。アンケートは、2015年1月上旬に対象地域である群馬県桐生市の中心市街地を対象として、全世帯(412世帯)の世帯主を対象に配布し、同年2月下旬までに郵送による回収を行った。総回答数は103世帯(25.0%)であった。 <br> <br>3.調査結果の概要 桐生市では2006年より、市内の空き家を活用するための斡旋型空き家事業(空き家バンク)をスタートさせた。近年では、学生やアーティストに向けて空き家を低コストで貸し出す計画も始まり、市は人口回復や観光産業の活性化への期待を寄せている。一方で、実施したアンケートからは、空洞化した中心市街地の現状や、少子高齢化してゆく地域コミュニティの将来に対する悲観的な見解が明らかになった。行政による一連の試みについては、買い物、交通、病院等の生活の利便性を求める住民のニーズに必ずしも合致しない側面もあり、高齢化をめぐる行政の施策と住民の認識との間には少なからず齟齬があることがわかった。少子高齢化する都市・地域において、今後重要になってくるのは、新たな若年層の呼び込みや、かつてのような経済成長ではなく、現に地域に残った人々の生活の質の確保である。そして、それこそが少子高齢化した地域の持続可能性の礎となってゆくものであろう。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672443520
  • NII論文ID
    130007018005
  • DOI
    10.14866/ajg.2016s.0_100280
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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