高等学校におけるGIS利用の現状

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タイトル別名
  • The Current Status of GIS using in High School:
  • 「地理総合」を視野に
  • from the perspective of Integrated Geography

抄録

1.はじめに<br> 高等学校の「地理総合」は、2016年12月の中央教育審議会答申(中教審第197号)において、「歴史総合」とともに地理歴史科の必履修科目に位置づけられた。そこでは、地図やGISなどを用いる汎用的で実践的な地理的技能の修得が、主要な柱の1つ位置づけられた。このGISの利用に関して問題となるのが、担当する教員の技能や、高校のICT設備である。これまでも、高等学校におけるGIS利用に関しては、いくつか調査がなされてきたが(福田・谷2003;大島2013;加藤2015)、地域や対象者が限定的だった。そこで、「地理総合」の学習指導要領の告示を前に、高等学校におけるGIS利用の全国調査を実施した。<br> 対象としたのは、全国の公立高等学校・中等教育学校であり、4割1331校を無作為抽出した。抽出された高校に対して郵送による調査を行い、474校(35.6%)から回答が得られた。質問項目は、地理の開講状況など学校に関する項目と、GISの利用経験など回答者に関する項目に分かれている。  <br><br>2.学校に関する項目<br> 学校に関する質問事項では、まず地理A//Bを開講していない学校が11.0%あった。普通教室の設備では、教室内にパソコンの画面を投影できる設備が設置されている学校が20.9%、持ち運び可能な備品がある学校が62.4%、ない学校が16.7%だった。さらに、教室内に投影設備があり、かつ有線または無線LANに接続できるとした回答は14.6%だった。WebGISを普通教室で使用するには、最低限パソコンの投影装置が必要だが、教室に設置されている高校は少なく、また、ネット接続も不十分であり、簡便な利用は難しい状況である。<br><br>3.教員に関する項目<br>  教員に関する項目は、各学校の社会科(地理歴史・公民)担当教員のうち、地理を専門とする教員がいる場合は当該教員が回答し、そうでない場合は他の教員が回答するように依頼した。その結果、回答者で地理を専門とすると回答した者は58.9%と、地理を専門とする教員のいない高校も多いことがわかる。回答者の年齢では50歳代が最も多く、大学でGISの授業を受けた経験を持つ者は14.6%に過ぎない。GISについて「内容も名前も知らなかった」との回答が9.3%あった。<br> GISの研修を受けたことのある者は14.1%で、うち「企業や学会、研究会やNPOの主催」「教育委員会による研修」「所属部会・サークルの主催」「教員免許状更新講習」がそれぞれ35.8%、31.3%、29.9%、17.9%であった。研修内容ではGISの使い方が82.1%で、GISを使った指導法は35.8%だった。このように研修の主体はさまざまだが、研修内容はGISの使い方が中心である。<br> 地理の授業でのGISの扱い方では、「GISの概念を説明するにとどめる」が63.3%で、実際にGISを授業で活用したことのある者は23.8%だった。歴史・公民系科目でも使われているが、多くは地理A/Bである。最も使われているソフトはGoogle Earthで、授業でのGIS利用者の80.5%が使用していた。Web地図サービスの利用では、Googleマップ等一般の地図サイトが84.1%、地理院地図が70.8%だった。今後期待されるGISの種類をみると、GISの利用者ではWebGISへの期待が高く、非利用者では使用イメージが湧かないためか、「わからない」が最も多かった。<br> GISを利用する上での課題を自由記述で尋ねたところ、圧倒的に多かったのは設備に関する問題で191件にのぼり、ついで時間の問題が72件、教員の問題が59件と続いた。<br> 以上から、「地理総合」でGISを導入する際には、高校でのICT機器の整備がまず前提にあり、並行して研修を進めていく必要があると言えるだろう。<br><br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672634752
  • NII論文ID
    130006182617
  • DOI
    10.14866/ajg.2017a.0_100049
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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