福島県駒止湿原開拓農地跡における植生回復に関する土壌調査

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タイトル別名
  • Soil survey on vegetation recovery of the abandoned cropland around Komado Shitsugen Moor, Fukushima Prefecture

抄録

【背景と目的】<BR><br>本研究の対象地である福島県南会津町・昭和村に位置する駒止湿原は,1950年代に周辺地域が開拓地として開墾された。農地開発のためのブナ林伐採は1967年から1976年まで続き,抜根・整地のためにブナ林下の有機質表層が失われた。天然記念物に指定された1970年以降,湿原の保全対策が次第に強化され,農地からの土砂流入が湿原の生態系に影響を与えていることが指摘されると,2000年までに集水域全体が天然記念物として追加指定された。開拓農地跡は裸地化したが,2000年よりブナ林復元事業が実施された(図1)。2016年現在,ススキ草地の中に成長したブナ個体を認めることができるが,ブナ二次林辺縁部には,枯死あるいは成長していないブナの個体が多い一帯がある。<BR><br>そこで,本研究では,植生の回復と有機質表層の再生との過程を明らかとするため,ブナ二次林から耕作放棄地であるススキ草地にかけて複数地点で土壌調査を行い,土壌断面の観察をおこなった。<BR><br>【研究の方法】<BR><br>駒止湿原周辺に分布するブナ二次林と開墾跡地を含むように,調査区(10×30m)を設置した。優占する植生の違いから,それぞれブナ林区,境界区,および放棄地区と区分し,コドラート内に自生する植生調査を行うとともに,コドラート両端および各区境界の4地点において土壌断面調査を実施した。また,各層位から土壌試料を採取し,一般理化学性の分析を行なった。<BR><br>【結果と考察】<BR><br>4地点における土壌断面調査の結果を図2に示す。農地開拓に伴う表土削剥の影響を受けていないブナ二次林下の2地点では,10cm以上A層が認められた(全炭素量20%以上)。そして,開拓跡地である放棄地区では,ススキの根が張る表層土壌もブナ二次林下層土に近い褐色を呈し,有機質表層の形成はほとんど認められなかった(全炭素量5%以下)。一方,ササが繁茂する境界区側の地点では,ササや他の下草の根が張る地表面から5cm程度の範囲において,比較的明度が低く全炭素量15%程度の有機質表層の分布が認められた。今後,ササおよびススキの繁茂と有機質表層形成との関係について調査し,ブナ林再生に向けた課題を明らかにするとともに,植生回復と土壌生成との関係に言及していく。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672644736
  • NII論文ID
    130006182631
  • DOI
    10.14866/ajg.2017a.0_100057
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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