東北地方太平洋沖地震による宮城県北部における液状化発生地点の地形条件と土地履歴

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タイトル別名
  • Geomorphic conditions and land history of the liquefied sites in the northern part of Miyagi prefecture caused by the 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake

抄録

1.はじめに2011年東北地方太平洋沖地震により,東北地方と関東地方の広範囲において地盤の液状化による被害が生じた.関東地方における液状化被害に関しては詳細な調査・研究がなされているが,関東地方と同等以上の震度が観測された東北地方における液状化被害に関する調査・研究は比較的少なく,詳細な液状化被害分布は明らかでない.本研究では,震度5強から6強の揺れが観測された宮城県北部の大崎平野と仙北平野を調査対象地域とし,地盤の液状化の発生を示す確実な証拠となる噴砂のほか,液状化に起因すると推測される構造物被害の分布を明らかにした.さらに本発表では,噴砂の発生地点や液状化に起因すると推測される構造物被害(特に,マンホールの浮き上がり被害)と微地形・土地の履歴との関係に関する検討結果を示す.2.調査方法と使用したデータ噴砂発生地点の分布を明らかにするため,Google Earth画像の判読をおこなった.Google Earth画像の画像取得日は,2011年4月6日である.また,液状化に起因する構造物被害の分布を明らかにするため現地踏査をおこない,目視による観察に基づいて被害発生地点のマッピング,被害形態の記載をおこなった.現地踏査は2011年6月~2012年9月におこなった.さらに,Googleマップのストリートビューを用いて,おもに市街地におけるマンホールの浮き上がり被害の確認・抽出もおこなった.液状化発生地点と微地形や土地の履歴との関係を検討するため,液状化発生地点について,治水地形分類図や土地条件図,旧版地形図などとの重ね合わせをGISを用いておこなった.3.液状化被害発生地点の分布と微地形,土地履歴との関係噴砂は,鳴瀬川,江合川,迫川,旧迫川,北上川などの河川の旧河道や自然堤防(蛇行州)において,多数生じていた領域がみられた.しかし,多量の噴砂が高密度で生じた利根川下流域旧河道と比較すると,本調査地域旧河道の噴砂発生地点数は少なく,利根川下流域の旧河道・旧湖沼のような一定の面積にわたって高密度(連続的)に噴砂が発生した領域はみられなかった.利根川下流域の液状化発生地点のほとんどは,明治後期以降の比較的新しい時期に利根川河床の浚渫土砂により埋め立てられた旧河道・旧湖沼であった.仙北平野においても,利根川下流域と同様に,かつて多くの湖沼が存在したが,その多くは埋め立てではなく,昭和前期の干拓事業により陸域化し,農耕地へと変化した.そのような旧湖沼の干拓地では,噴砂の発生数は少なかった.また,登米市内の北上川と迫川に挟まれた地域には,1600年代初頭までの北上川の河道であった帯状の領域(旧河道)が連続的に存在するが,噴砂が生じていた地点はその一部の領域のみであった.本調査地域では,埋め立てや盛土などにより表層部に人為的に形成された緩い砂質地盤が存在する領域が少ないことが,液状化発生地点数がそれほど多くなかった要因の一つとして考えられる.本調査地域の噴砂は,上記の河川沿いの高水敷,氾濫平野,段丘や,大崎平野西部の田川,渋川沿いの氾濫平野上などにおいても生じていた.液状化に起因すると推測される構造物被害としては,鳴瀬川や江合川の河川堤防の崩落・沈下・亀裂,建物周辺地盤の沈下,マンホールや浄化槽などの地中埋設物の浮き上がりなどが多くみられた.堤防の被害は,自然堤防,氾濫平野,旧河道などにおいて生じていた.堤防被害の要因としては,基礎地盤または堤体内部の液状化が指摘されている(国交省東北地方整備局 2011).建物被害に関しては,沈下・傾斜といった大きな被害の発生数は比較的少なかったが,建物周辺地盤の沈下による抜け上がりが,大崎市古川地区や登米市佐沼地区の氾濫平野上に位置する1980年代以降の比較的新しい時期に造成された地域において多くみられた.本調査地域のマンホールの浮き上がり被害は,表層地盤がおもに砂質土からなる自然堤防と,粘性土が卓越する氾濫平野(後背湿地)のどちらにおいても生じていた.しかし,マンホールの浮き上がり量は,氾濫平野上において浮き上がり量が大きい傾向がみられた.その中でも,丘陵地や台地との境界部付近に位置する泥炭地において,50cm以上の浮き上がり量を示した地点が多数みられた.また,マンホールの浮き上がり量の大きい泥炭地では,マンホール周辺の自然地盤における噴砂は確認されなかった.以上のことから,本調査地域における液状化の発生は局所的なものが多く,利根川下流域の旧河道・旧湖沼のように,一定の広がりを持った領域において高密度かつ連続的に噴砂や構造物被害が生じた領域はみられなかった.マンホールなど地中埋設物の浮き上がり被害が多数の地点でみられ,1993年釧路沖地震以降の複数の地震発生時と同様に,粘性土が卓越する軟弱地盤において浮き上がり量が大きくなる傾向が認められた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672695040
  • NII論文ID
    130005457265
  • DOI
    10.14866/ajg.2013s.0_127
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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