地方都市中心市街地商店街における新たなまちづくり活動の展望

書誌事項

タイトル別名
  • A Perspective for New Machizukuri Activity in Shopping District of Local City Center
  • 愛知県豊橋市を事例として
  • A Case Study of Toyohashi City, Aichi Prefecture

説明

1.はじめに<br> 中心市街地活性化法の施行(1998年)および改正(2006)以降も地方都市中心市街地における商業機能の衰退は続いている。にぎわいの喪失,空き店舗の増加など,商店街問題は地方都市における大きな課題の一つである。こうしたなか,従来の商業という視点とは異なる活性化に向けた取り組みが,中心市街地の商店街で目立つようになった。本発表では愛知県豊橋市を事例として,大型店撤退などによる商業機能の衰退をきっかけとして商店街を中心として始まったまちづくり活動をとりあげ,地方都市中心市街地における商店街・まちなか活性化への取り組みの紹介とその可能性について検討する。<br>2.豊橋市中心市街地における開発動向<br> 豊橋市は宿場町を起源とする東三河地域の中心都市であり,2010年現在の人口は約37万である。1990年代までは中心市街地に百貨店,大型店をはじめとした商業・サービス機能が集積していた。しかし,1990年代後半より大型店の撤退やバスターミナルの廃止がみられ,中心市街地における商業機能は低下していった。その一方で2000年以降,駅前大通り北地区(広小路通り)を中心として,民間業者によるマンションの開発が進んでいる。しかし北部に比べると南部では行政・民間による開発は遅れていた。こうした中心市街地における開発格差状況を打開するべく,駅前大通り南地区の商店街を中心として,民間企業や行政をまきこんだまちづくり活動が始まった。<br>3.駅前大通り南地区を中心としたまちづくり活動とその概要<br> 駅前大通り南地区において最も特徴的な商店街として,「水上ビル」が挙げられる。高度経済成長期の1960代後半にかけて農業用水路上に建設された建築物である。戦後の「ヤミ市」から派生したいくつかの商店街に端を発しており,建物のみを個人または企業が所有し,土地は河川管理者より借地するという形態がとられている(黒野2010)。賃料が比較的安いため,若手経営者による店舗もみられる。しかし,建築されてから約50年が経過しており,建て替えに関する問題が浮上している。<br> これらの状況を背景として,この「水上ビル」を中心として,いくつかのまちづくり活動が始まっている。なかでも,2004年より開催されている都市型アートイベント「sebone」が注目される。「ひとづくり(アート)」と「まちづくり(都市計画)」の2つを軸とし,前者はアートの魅力を活かして豊かなひとづくりへの貢献や日常におけるアートとの触れ合いを,そして後者は豊橋市の中心市街地活性化,商店街活性化,豊橋駅周辺への新たな賑わい空間の創造などをねらいとしている。主催者であるsebone実行委員会はボランティア集団であり,老若男女問わずまちづくりに興味のあるさまざまなバックグラウンドをもった市民が参加している。さらに,地元商業団体や協議会,地元民間企業も共催・後援に加わっている。<br> 発表当日は,駅前大通り南地区におけるまちづくり活動の動向について検討するとともに,「水上ビル」の店舗構成の変遷,seboneにかかわるメンバーの社会的関係性などの分析結果から,今後の豊橋市におけるまちづくり活動とその展望について考察する。 <br> <br>本発表の内容は,2013年度愛知大学地域政策学部開講の「ゼミナールI」履修学生と発表者とによる調査結果をもとにしたものである。 <br> <br>参考文献<br>黒野有一郎(2010):豊橋「水上ビル」懇話―その成り立ちと次の10年位向けて.都市計画59(4):p.78.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672806656
  • NII論文ID
    130005473485
  • DOI
    10.14866/ajg.2013a.0_100059
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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