石川県の沿岸集落における津波への防災意識・行動の特徴と課題

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  • Problems on the awareness and behaviors for Tsunami disaster prevention in coastal area in Ishikawa Pref.

抄録

青木・林(2009)で指摘したように,石川県では比較的大規模な災害に見舞われる頻度が低かったことも影響し,地域住民が自地域に生じうる災害のリスクや特性を意識して事前に備える取り組みが十分ではなかった。津波に対する理解や備えについては,一般住民よりも海との関わりが深い者のほうがより豊富であったであったものの,誤った理解や行動も散見された。また,高齢層や女性では,危険回避行動の判断を他者に依存するなど,受動的態度がみられた。東日本大震災の発生を受けて,石川県でも地域住民の間で防災への関心が高まり,各地で学習や訓練の場が設けられてきた。<br> 石川県では,地域防災計画の改訂に合わせ,津波浸水想定の見直しを行った(石川県,2013)。波源となる海底活断層を複数設定した結果,従来の想定に比べて沿岸域の広い範囲で津波到達までのリードタイムが短く(最短9分),最大津波高も高くなった(最大18.6m)。特に,リードタイムが短いことから,沿岸域では地震発生時に速やかな避難を求められることとなった。避難の実現のためには,災害や地域の特性に関する事前の学習とそれを踏まえた備えを必要とする。<br> そこで本研究では,石川県の沿岸集落を対象とし,そこに住む住民が当該地域で想定されている津波に対してどのような備えをし,どのような側面に不安を抱えているのか,地域の防災活動上の課題は何かを明らかにするために,地域住民へのアンケートを実施した結果を分析する。<br><br> 報告では,アンケートの考察結果から,各地区あるいは4地区に共通してみられる地域の防災活動や住民の意識・行動における傾向と課題を整理する。詳細は当日の報告に譲るが,4地区共通でみられる主な特徴と課題として,<br><br>①東日本大震災に関わる情報過多が影響したと思われる各地域の津波情報の理解にみられる問題<br>②関連情報の確認や津波の特性の理解などが十分でないまま被災の不安を持ち,備えや訓練も十分でない住民がいること<br>③想定されている第1波到達時間を過大に、最大津波高を過小に理解している住民が相当数存在することや、これらが無回答であった住民が多いこと<br>④若年層に対する意識喚起の必要性や,都市的性格のある地区での活動の困難さ,高齢者の消極的意識の改善と避難行動支援策の必要性。地域で防災活動に取り組むことによる,地域全体の意識や関心の喚起効果。<br>⑤複数、近接の避難経路・場所の確保とそれらの整備や、夜間・降雪時期にも対応可能な避難場所・経路整備の不足、防災無線の聞き取りづらさ<br><br>を挙げることができる。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672808576
  • NII論文ID
    130005473588
  • DOI
    10.14866/ajg.2013a.0_100061
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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