前漢代における天文観測と地上方位測量の精度
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- 野上 道男
- 無所属
書誌事項
- タイトル別名
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- Precision of astronomical observation and aspect measurement in the Former Han Era
説明
太陰太陽暦と天文観測: 『淮南子』(-121年以前に成立)天文訓に、「星分度」として28宿の広がり(度数)について,次のような記述がある.『漢書』(1世紀後半に成立)天文志もこの値と同じである.<br> 角12, 亢 9, 氐 15, 房 5, 心 5, 尾 18, 箕11,<br> 斗26, 牽牛 8, 須女12, 虛10, 危17, 營室16, 東壁 9, <br> 奎16, 婁 12, 胃 14, 昴11, 畢16, 觜嶲 2, 參 9, <br> 東井33,輿鬼 4, 柳 15, 星 7, 張18, 翼 18, 軫17<br> 以上合計365度である(端数は「斗」に加える).つまり全天(一周365度)に、冬至基点で不等間隔で恒星の座標値(入宿度)が目盛られている.これは天球座標における赤経に相当する.<br> これと現在の知識である恒星の赤経と比較することで、当時の観測精度を検証できる.ただし現在の赤経は春分点からの角度で測られており、かつ25800年を周期とする歳差運動(地軸のごますり運動)のため春分点が移動しているので、これを考慮する必要がある.近日点の移動周期約11万年は無視できるであろう.結果を述べれば、28宿星の位置(角度)の観測精度は良好である.<br> 見透しのない遠距離への方位測量: 『周逸書』『漢書』に次のような記述がある.(ゴチ文字部分) <br>①「東南曰揚州:其山曰會稽」会稽山主峰香炉峰(354m、120.61E、29.95N)まで860km、方位はN123.1E.東南の中心線N135Eとのずれは12度. <br>②「正南曰荊州:其山曰衡」湖南省衡陽市衡山(1300m、112.65E、27.25E).800km、方位はN183.5E.<br>③「正東曰青州:其山曰沂」沂山(1032m、118.63E、36.19N). 540km、N66.7E.<br>④「正西曰雍州;其山曰岳」岳山は西鎮であり、現在は呉山(1440m、106.87E、34.66E).580km、N274.6E.<br>⑤[東北曰幽州:其山曰醫無閭」北鎮市西北約5km医巫闾山(867m、121.73E、41.62N).1100km、N40.6E.<br>⑥「正北曰并州:其山曰恆山」大同市の恒山(2017m、113.73E、39.67N).590km、N4.9E.<br> 上紀6つのうち洛陽から見透せる山は一つもない.8方位系の中心線(45度ごと)との誤差は①12度、②4度、③23度、④5度、⑥5度である.8方位としては十分な精度である.<br> 見透しのない点への方位測量法については史書に記述がない.数値があるのみである.『晋書』巻82列伝「裴秀」条に記述がある「製圖之體有六」に、見透しがなくても地図を作れる、とあるのみである.可能性のある方位測量法については別報告としたい.<br><br><br><br><br> <br><br>
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2016a (0), 100011-, 2016
公益社団法人 日本地理学会
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680672859264
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- NII論文ID
- 130005279651
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可