シンポジウム「3.11その時,その後―震災を経験した総合大学による分野横断型災害研究の実践―」:趣旨説明

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タイトル別名
  • The objectives of the symposium "At the moment and after March 11th 2011 Tohoku-oki earthquake; Multi-disciplinary research of disaster science conducted by researchers in IRIDeS, Tohoku University"

抄録

1. はじめに  <br>  2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震( Mw = 9.0)によって,東北地方太平洋岸の広範囲で甚大な被害が発生した.本シンポジウムオーガナイザーらの所属する東北大学では,この大震災を契機に,2012年度より災害科学国際研究所(以下,災害研とする)が発足した.東北大災害研は,7研究部門(災害リスク研究部門,人間・社会対応研究部門,地域・都市再生研究部門,災害理学研究部門,災害医学研究部門,情報管理・社会連携研究部門,寄付研究部門)から構成され,兼務教員も含めて80人超のスタッフが在籍する。在籍するスタッフの研究分野は人文社会系から,理学系,工学系,さらには医学系など多様であり,分野横断型の研究を通じて災害科学に関する研究を進めている。 <br>  東北大災害研は発足から4年半経過し(2016年10月現在),これまでに積極的な研究活動を行ってきた.研究内容は,巨大地震および津波の発生メカニズムの解明,被害の状況や将来評価,震災の教訓のアーカイヴ化など多岐にわたる。また,宮城県や岩手県の自治体とは連携協定をむすび,防災・減災に関する情報や知識を提供するなど,地域連携にも注力している。  <br>  ところで,東北大災害研における,分野横断型の研究スタイルは都市地理学や経済地理学などの人文分野や気候学,地形学などの自然分野など多彩な分野から構成される地理学の研究と共通する。東北大災害研における研究活動を日本地理学会員に発信することは,第一に,津波被害,文理連携,医療支援活動,災害アーカイヴといった幅広い分野にわたる災害研究の取り組みや成果を全国規模の研究コミュニティにアピールするという点で意義がある.さらに,災害研の研究者が日本地理学会の研究者と議論することは,日本地理学会員にとっては災害研究において地理学が生かされる点を探るきっかけになり,災害研の研究者にとっては,災害の地理学的な捉え方について再考する絶好の機会になると期待される.  そこで今回,災害研所属であり,東北大地理学教室に関わるスタッフを中心に本シンポジウムを企画した.本シンポジウムは第一部の講演および第二部のパネルディスカッションから構成される. <br><br>2. シンポジウムの内容 <br>  第一部では災害研所属の日本地理学会非会員の若手研究者が多種多様な研究活動を紹介する.1件目は,サッパシーアナワット准教授による,2004年インド洋津波と2011年東北津波の被害の比較に関する内容である.2件目は蝦名裕一准教授による,歴史学を軸として地震学・地質学などとも連携した分野横断型の災害研究の内容である.3件目は佐々木宏之助教による,3.11の教訓を生かした医療支援活動の内容である.4件目は,柴山明寛准教授による震災アーカイヴ活動(震災の記録・教訓をどのように伝え、残していくか)の内容である.<br>  第二部のパネルディスカッションでは,まず,3名のコメンテーターが災害研の活動に対しコメントする.1人目の今泉俊文教授からは,理学研究科を本務とし,かつ災害研を兼務する日本地理学会員の立場から,災害研設立時の理学研究科の協力,災害研への地理分野の関与に関する補足説明・コメントを行う.2人目の須貝俊彦教授からは,所外の自然地理分野,および,文理融合を挙げて研究教育を行う東京大学大学院新領域創成科学研究科に所属する日本地理学会員の立場から,災害研の活動へコメントする.3人目の磯田弦准教授からは,所外の人文地理分野の立場および,東北大に所属する日本地理学会員の立場から,災害研の活動に対してコメントする.コメンテーターからのコメントだけでなく,会場からも質問やコメントを受け付け,災害研究に対し,多様な角度から議論をしていく.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680672869760
  • NII論文ID
    130005279660
  • DOI
    10.14866/ajg.2016a.0_100021
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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