新潟県信濃川下流域における果樹栽培の地域性

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The locality of fruit growing in the reaches of The Shinano River Niigata

抄録

1.はじめに<br>新潟県は信濃川流域に広大な穀倉地帯を有している。一方で新潟市南区旧白根市を中心とした信濃川下流域においては、梨やぶどうや桃を中心とした果樹栽培が盛んに行われている。そしてこの一帯は、洋ナシ「ル・レクチェ」の発祥の地であり、全国一の生産量を誇ることが特色である。日本では、山梨県や山形県、長野県、岡山県など、各地に果樹栽培を盛んに行う地域がみられるが、新潟県のように稲作の盛んな地域の中で果樹栽培が行われるものとは対照的である。また、新潟県のような穀倉地帯における果樹栽培の特徴を分析した研究は少ない。そこで本研究では、全国的にみられやすい果樹栽培地域とは立地条件の異なる条件下において、どのような果樹栽培が展開されているのか、その特徴を分析する。<br>2.研究方法 <br>本研究では、まず信濃川下流域にあたる市区町村の中から、2010年において土地利用に占める果樹園の面積の割合が高い所を抽出する。そのため、各市町村において、果樹園・田・畑それぞれの耕地面積をみる。次に、抽出した市区町村の中から、昭和の大合併当時の旧市町村単位で、同じように果樹園の割合が高い地区を抽出する。それによって得られた地区を果樹栽培の盛んな所と定義する。また、それらについて、現在果樹栽培が盛んに行われるまでにどのような経緯をたどってきたのか、過去のデータを基にして、傾向を分析する。果樹園・田・畑の各土地利用の他、それぞれの土地で労働する経営体の数についても併せて検証する。ところで、本研究には1970年から政府によって行われた減反政策の影響により、土地利用の変化があったのではないかという予察がある。そのため、1970年より10年毎、2010年に至るまでの土地利用の変遷を追う。データについては、農林水産省で実施されている「世界農林業センサス」のデータを使用した。<br>3.果樹栽培の盛んな地域の範囲<br>①果樹栽培の盛んな市区町村は新潟市江南区・新潟市南区・新潟市西蒲区・加茂市・三条市・田上町が抽出された。②抽出された6市区町村について、さらに果樹栽培の盛んな地区を抽出したところ、新潟市南区大郷・新飯田・茨曽根・月潟、新潟市西蒲区子吉、加茂市加茂・須田、三条市大島の8地区に絞られた。③これら8地区は、信濃川河口より30~50kmの範囲に集中し、特に信濃川の西側に注ぐ支流の中ノ口川に沿う所が多い。<br>4.土地利用・経営体の経年変化<br>①1970年から果樹園の面積が増加し、その一方で田の面積が減少する傾向にある。このことから、減反政策に伴う転作が推進されたことが明らかになった。②だが、2000年をピークにそれまで増加傾向にあった果樹園の面積が減少に転じた地区が多い。③2010年に至るまで増加し続けているのは加茂市加茂と三条市大島の2地区のみである。特に大島地区では2010年において117.44haと、対象地区の中で最大の果樹園の面積を有する。④経営体は1970年からいずれの土地利用においても減少傾向にある。<br>参考文献<br>中野耕栄・平野信之 2001. 水田単作地帯における果樹産地の展開と今後の方向 –新潟県白根市の果樹産地事例から-. 農業普及研究 6(1):1-9

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673135360
  • NII論文ID
    130005473823
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100317
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ