2004年中越地震時の地すべりと山地斜面の発達過程

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  • Earthquake-induced landslides during the 2004 mid-Niigata earthquake and geomorphological development of mountain slopes

抄録

1.はじめに2004年新潟県中越地震時には多くの斜面変動が生じ、その特徴が議論されている(たとえば千木良,2005;八木ほか,2005;岩橋ほか,2006;関口・佐藤,2006;ハスバートルほか,2009).しかし山地全体の地形発達過程から斜面変動の特徴を議論した事例は関口・佐藤(2006)と下河・稲垣(2009)を除いて例がない.本発表では,魚沼山地の形成過程と地すべり発生場所の関係について議論する.<br>.2.地すべりの発生場所中越地震時には,深さ約10m以上のすべり面をもつ地すべりは芋川流域で多発したほか,信濃川近傍や和田川流域でも少数発生した.一方,強震域の中では最も総隆起量の大きな東山背斜の近傍では大規模な地すべり地形が発達するにもかかわらず地すべり(表層崩壊を除く)はほとんど発生していない.<br>3.魚沼山地の地殻変動過程 この地震の強震域である魚沼山地では,広い範囲で中期更新世初頭に堆積を終了した魚沼層群を,Ata-Th(約240ka)が挟在する(武田ほか,2005)御山層が不整合に覆う.また破間川右岸の高位段丘面(道光高原面)を覆うローム層の中部よりIn-Kt(130~150ka)起源のカミングトン閃石が多産する(小荒井ほか,2011).ローム層の堆積速度を一定と仮定すると高位段丘面の離水時期は少なくとも30万年前以前と考えられる.以上より当地域の地殻変動は中期更新世前期に始まったと考えられる.<br>4.山地の隆起と地すべり前線芋川流域で多くの地震地すべりが発生した背景には活褶曲を伴った隆起による芋川の急速な下刻(小荒井ほか,2011)によって地すべり末端部の斜面が不安定化していたことが考えられる.また魚沼山地の地すべり・斜面崩壊は尾根と谷の比高が大きな場所で多発している (黒木ほか,2011).一方,東山背斜近傍には大規模地すべり地形が発達するが地震時に地すべりの再活動はごくわずかしかなかった.このことは,単に誘因としての地震動の違いだけでなく,東山背斜周辺が地震時に大規模な地すべりを起こしにくい地形条件を持つことを示唆する.その要因として大規模地すべり地形が発達したことによって尾根-谷間の比高が減じたことが挙げられる.以上は,地すべり発生を素因に着目して見た際に,活褶曲に伴って隆起しつつある山地において,尾根-谷間の比高が大きく河川の下刻が活発となりやすい場所が「地すべり前線」ともいうべき場となって山地が開析されつつあること,総隆起量が大きな場所であっても過去の地すべりによって尾根-谷間の比高が小さくなった場所では地震に伴う地すべりが生じにくいことを示唆する.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673163264
  • NII論文ID
    130005456974
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100035
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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