東日本大震災被災地における外国籍住民の分布と支援活動

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Distribution of non-Japanese residents and support activities for them in the Great East Japan Earthquake disaster-stricken areas

抄録

平成22年国勢調査によれば、東日本大震災で被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県の3県の外国人比率は約0.5%で、日本全体の1.3%に比べるとかなり低い。国籍は、中国、韓国朝鮮、フィリピンが多い。被災地に居住していた外国人は、1)技能実習生・研修生、2)日本語学校や大学の留学生、3)日本人と結婚した外国人妻、が多くを占めていた。原子力発電所の事故が起こったことや、研修生たちが働いていた工場が被災したことなどのため、1)と2)の外国人の多くは、地震発生後、短期間のうちに帰国した。したがって、発災後に支援が必要とされたのは、主として3)の外国人妻たちであった。彼女たちの多くは、嫁不足の農村や漁村に嫁いだ中国人やフィリピン人であり、日本人の夫の親と同居している場合も多い。周囲に同じ国の出身者がいない環境の中で暮らしているために、災害時は特に孤立しやすい。 外国籍人口は、都市だけでなく農漁村地域に広く分布する(いわゆる外国人妻には、このほか日本国籍に帰化した人々もいる)。対象とした国勢調査小地域5446カ所のうち、外国人が居住している小地域は1938、そのうち外国人が1人しかいない小地域は757、それが女性である小地域は623カ所であった。阪神大震災後の外国人災害支援策は、1990年代に日系人が急激に増加したこともあり、外国人集住地区への支援を想定したものであった。しかし、東日本大震災の被災地ではその有効性は限られる。また、外国人のみを援助するといった支援のやり方は、外国人妻を家族や地域社会の中で特別扱いして、かえって孤立させる可能性がある。孤立化を防ぐための1つの方法は、地理的に分散している彼女たちを結びつけるネットワークの形成である。フィリピン出身者たちにとってはカトリック教会をハブとしたネットワークがその役割を担っている。中国出身者にとっては、各地の国際交流協会やNPOが運営する日本語教室が今後そうした役割を果たしていけるかどうかが鍵となるであろう。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673181184
  • NII論文ID
    130005457217
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100270
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ