夏季日中における首都圏のヒートアイランドの実態と形成要因

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タイトル別名
  • Actual condition of urban heat island in Tokyo metropolis in summer daytime and its formative factors

抄録

筆者らの研究グループでは首都圏全体のヒートアイランド現象を空間的・時間的に高密度に観測するために,気温の観測網を展開している.この観測網を「広域METROS」と呼称している. この広域METROSのデータを使って,夏季日中に南寄りの風が吹いた日を対象に気温分布を解析したところ,首都圏の気温分布は海風の影響を強く受けていたことが明らかになった.典型的な海風前線が見られた日には,海風前線が関東平野の中央部を進行する13~15時には,海風が進入している沿岸域が低温となり,海風前線の前面で気温が高い傾向が見られた.このうち,東京の風下では特に他の地域に比べて海風前線の進入が遅く,風が弱く,気温が高かった.東京の風下に形成される高温域の中心は埼玉県川越市付近に位置していた.この時間帯には従来のAMeDASデータの解析から関東平野の高温の中心であるとされた埼玉県熊谷市付近でも周囲よりも気温が高く,午後の早い時間の内陸の高温域は,関東平野の中央部と北西部の2つの地域に分離されることが明らかになった.一方で、総観規模でやや強い南寄りの風が吹きやすい気圧配置の日の気温分布を解析したところ,海風前線が風の水平分布からはほとんど見られずに,午後の早い時間帯に川越市付近に顕著な高温域が見られずに,関東平野の北部に高温の中心が位置していた.このことから,川越市付近の高温域の形成には海風前線が関係していることが示唆された. 内陸の高温域(川越市付近と熊谷市付近)の気温が沿岸部と比較して相対的に一番高くなるのは,典型的な海風前線が見られる日であった.特に川越と沿岸部の気温が拡大する時には東京の風下で海風前線が停滞しているときであった. 内陸の高温域で気温が高くなりやすい原因として下降流の存在が考えられた.川越付近では海風前線の通過前に露点温度の顕著な現象が観測される.これは海風前線前面に存在する弱い下降流に対応していると考えられ,海風前線の進入が遅いことで川越付近では長く下降流域に存在することによって気温が高くなると考えられる.一方で,熊谷付近では海からの空気の進入が他の風向の日に比べて遅く,谷風循環の下降流が長く続くために,気温が高くなっていると考えられる.また,地上の観測データから移流量を計算したところ,高温域形成に移流の影響はないと結論づけられた.

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  • CRID
    1390282680673189376
  • NII論文ID
    130005457020
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100057
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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