滋賀県高島市朽木におけるトチノキ巨木林の立地環境

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タイトル別名
  • Environmental characteristics of giant trees of Japanese horse chestnut in Kutsuki area, Shiga

抄録

トチノキは日本の冷温帯に広く分布する落葉高木であり,胸高周囲長が300cm以上の巨木になることが報告されている.滋賀県高島市朽木地域でも,山地源流域にトチノキの巨木が生育している.朽木地域では,トチノキ巨木が数個体以上まとまって分布する“巨木林”の存在が明らかになっている.しかし,内装材としてのトチノキ巨木の需要増大にともなって,巨木が軒並み伐採された谷もみられはじめている.<br> トチノキ巨木林は,地域住民にとってトチノミ採集の場として古くから重要であった.さらに,水源涵養や野生動物の採食資源といった生態学的な重要性も示唆されている.そのためトチノキ巨木林のとの将来的な関係性のあり方を考える上でも,現存しているトチノキ巨木林の立地環境やその生態学的機能,文化的意味合いについて早急に明らかにする必要がある.そこで本研究では,トチノキが残存している朽木地域の山地源流域を対象に,トチノキ巨木林の現状とその立地環境を明らかにすることを目的とする.<br> 調査は,朽木地域のY谷を対象に行った.Y谷は安曇川の支流にあたる北川沿いに位置している.調査は,集水域全体のトチノキの位置をGPS受信機によって記録し,各個体の樹高と胸高周囲長を計測した.また,現地観察と空中写真判読によって谷部全体の植生図を作成した.さらにトチノキ巨木林が分布する山地源流域において谷部の地形断面図を作成し,断面に沿って幅20mのベルトトランセクトを設置して,毎木調査を行った.調査対象木は胸高直径5cm以上の木本であり,樹種・樹高・胸高直径・位置を記載した.<br> トチノキは対象とした集水域全体(50ha)に胸高周囲長300cm以上の個体が52本記録された.特に枝谷の一つには,谷筋に19個体が記録され,うち17個体が胸高周囲長300cm~550cm,樹高15m~25mの範囲にある巨木が密生していた.植生は,谷の下流部にはスギの人工林が広く分布している一方で,上流部の尾根筋には落葉広葉樹が分布していた. <br> トチノキ巨木林の地形測量と測線に沿った植生調査の結果,谷底部にはトチノキの巨木が広い樹冠を持って生育しており,他に木本種や低木層の植物があまり生育していなかった.一方で斜面上方にはアカシデやコナラ,リョウブなどの二次林構成種の中低木が多く生育していた.また,斜面上方の低木層にはシカが採食しないユズリハが優占していた.<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673244032
  • NII論文ID
    130005457197
  • DOI
    10.14866/ajg.2012s.0_100186
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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