ALOS近赤外域(BAND4)画像合成空中写真を用いた土地被覆分類 ~2012年九州北部豪雨による白川浸水範囲を例に

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  • Land Cover Classification Using by ALOS Data Band4 Compositing Aerialphotograph~A Case Study in The Inundated Areas Induced by the 2012 Northern Kyushu Heavy Rainin the Shirakawa River

抄録

.はじめに デジタル化空中写真や人工衛星データをインターネットから容易に入手できるようになった現在,GISの普及もあいまって,最尤法により半自動的に分類項目ごとに分類し,手軽に土地被覆分類図を作成することができるようになった。空中写真のみによる最尤法分類は,R(赤,LANDSATデータのバンド3相当),G(緑,同バンド2相当),B(青,同バンド1相当)の可視領域の波長帯データのみを用いたものとなるため誤分類が頻発する。これに近赤外域の波長帯データをコンポジットすることで,衛星画像データを用いたものと同様の分類制度で,かつ解像度1m以下の詳細な土地被覆分類が作成可能である(黒田ほか,2011) 1)。しかし,この手法を用いた研究事例は少ない。地理学的な解析がパソコン上で行われることが多くなった今日において,デジタル化空中写真の利活用方法について検討することは有意義であると考えられる。そこで本研究では,2012年北部九州豪雨で浸水被害が生じた白川流域を対象に,GISとALOSバンド4画像をコンポジットした空中写真を用いて最尤法分類による土地被覆分類図の作成を試みた結果を報告する。 Ⅱ.研究方法 1.対象地域 白川流域で,解析対象とした範囲は河道中央から250mバッファを発生させた範囲とした。 2.データ 本研究で用いた空中写真と人工衛星データは,国土地理院撮影1/1万カラー空中写真(2007年2月8日撮影)で,解像度は1mとした。ALOSデータは,2008年11月13日観測のAVNIR-2データ (10mメッシュ)を使用した。 3.土地被覆分類図の作成 幾何補正や最尤法分類などの処理に関してのGISソフトはArcView9.2を使用した。空中写真とALOSの幾何補正を行ったあと, GISで空中写真のR(赤)をバンド1,G(緑)をバンド2,B(青)をバンド3,ALOSデータの近赤外域の画像をバンド4としてコンポジットした。最尤法分類に使用する教師データは,空中写真の目視判読により取得した。教師データはポリゴン形式のshape fileで作成し,その項目は,草地,裸地,樹林,市街地,水域の5項目とした。最尤法分類は,ArcView10のエクステンションであるSpatial Analysisの解析ツール「最尤法分類」で行った。 4.精度評価 最尤法分類結果と教師データを重ねあわせ,教師データ内の分類結果面積をGISで抽出することで評価した。 5.浸水範囲 2012年九州北部豪雨による被害地域を,国土地理院の平成24年7月九州北部豪雨に関する情報2)より確認し,ポリゴン形式のshape fileで浸水範囲データを作成した。 Ⅲ.結果 1.分類精度 空中写真による土地被覆分類の全分類項目の平均分類精度は82.7%であった。一方,ALOSバンド4をコンポジットしたものは88.0%となり,特に水域の分類精度は97.7%と高くなった。これは,水は近赤外域では反射率がほぼ0になるため,教師として取得した地点の水域の画素クラスの分布パターンが他の分類項目のそれと明瞭に異なることを反映した結果と考えられる。 2.浸水範囲と土地被覆分類 作成した土地被覆分類より,熊本市域の白川流域での浸水被害地の土地被覆の39.6%が市街地で最も割合が高く,次に樹林地が30.5%であった。これは,河畔林が浸水したと考えられる。裸地は20.5%,草地は9.2%で,河川の氾濫水が浸透しやすいと考えられる土地被覆が最も少ない割合となった。 Ⅳ.まとめ 1)空中写真にALOSデータバンド4画像をコンポジットすると,最尤法分類による土地被覆分類の分類精度の向上が見込める。2)目視判読と手作業による土地被覆分類図は膨大な時間をかけて作成されるが,本研究の方法だと容易にかつ短時間で作成可能となる。また,GIS上で各種解析作業ができるので,例えば浸水範囲と土地被覆の関係などを定量的に把握できる。 参考文献1) 黒田圭介・黒木貴一・宗建郎(2011):コンポジット空中写真画像を用いた土地被覆分類図作成試案.環境科学論文集,25,p.239-244.2) 国土交通省九州地方整備局(2012):平成24年7月九州北部豪雨について.http://www.qsr.mlit.go.jp/n-kawa/kensyo/02-tateno/houkokusyo(tateno)/houkokusyo_ref/05_ref_hokubu_gouu.pdf(2013年7月1日参照).

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673272704
  • NII論文ID
    130005473450
  • DOI
    10.14866/ajg.2013a.0_100050
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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