新疆ウイグル自治区における農産物の海外市場展開とその課題

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Oversee market developments and the Issues of agricultural product in Xinjiang Uyghur autonomous region

抄録

1.はじめに <br> 中国の経済発展と共に、新疆ウイグル自治区(以下新疆)では、穀物から商品作物である綿花、近年では野菜も加わり、農業の生産構造は多様化している。経済成長と生活レベルの向上により、生鮮野菜の通年需要が増加と施設栽培の拡大がその要因の一つとして考えられる。また現在、その農産物市場は新疆から中国国内、そして中央アジア諸国にも展開している。本発表では当地域における農業の変容としてこの施設栽培に着目し、当地の施設栽培と海外市場への展開状況、そしてその課題を模索することを目的とする。海外市場の対象地域は資源開発によって急速な経済成長を見せるカザフスタンの東部地域とし、当地の農産物市場、小売店への聞き取り調査から考察する。 <br><br>2.新疆における農産物の海外市場展開とインフラ整備<br> カザフスタンにおける2006年端境期の野菜消費量の内、カザフスタン産は34.3%で(伊犁州金融学会課題組2008)、輸入に頼らざるを得ない状況にある。新疆ではカザフスタン国内にも販売を拡大すべく、施設栽培による生産が推奨されている。また両国間では高速道路整備、国際鉄道路線の新規開通など交通インフラ整備も進められ、今後さらなる物流量増大が予想される。  <br><br>3.カザフスタンの青果物市場における輸入野菜の販売状況<br> カザフスタン東部の大都市、アルマトゥ市における輸入野菜の販売状況について、バザールの農産物卸売販売業者、スーパーにて聞き取りをした。結果は以下の通りである。バザールで販売される農産物の内、春~秋は地元産、冬(11~3月)は外国産で、特に厳冬期(2~3月)の約8~9割が中国産となる。従来は主にウズベキスタンから輸入していたが価格、種類や量の豊富さ、見た目のきれいさ、輸送距離などを勘案し、徐々に中国産へシフトしていった。そのほとんどは北京経由で輸入され、新疆産が入ることもあるがその量はまだ少ない。スーパーでも中国産農産物の種類は多く、コーナーの半分以上を占めている。バザール同様に中国産は低価格で種類豊富なため仕入れ量も多い。地元産・外国産ともに上記のバザール経由で仕入れ、中国企業とはまだ直接取引をしていないが、今後はできるだけ市場を介ない方針で、山東省やアモイの野菜生産・販売企業と契約予定である。新疆との取引は、地理的な近接性もあることから今後、積極的に行っていきたいが、適切な業者がまだいないということであった。 <br><br>4.まとめ<br> アルマトゥ市の市場、スーパーにおける中国産野菜は、低価格、豊富な種類、見た目の良さ、安定した供給量などから、輸入量は増加している。特に露地栽培を主体とする地元産の野菜が減少する冬季の需要は高い。しかし輸入する中国産野菜の主要産地は東部沿岸地域で、新疆産はまだ一部に限られている。東部地域に比べ、新疆は施設栽培の後発地域で栽培経験が浅いため、その販路が十分確保されていない為と考える。また、非合法な個人輸出により関税を逃れた農産物が路上マーケットで非常に安い価格で販売されているという問題もある。卸売・小売販売店は正規ルートの安全で安定した品物を必要としているため、ロット数の大きな取引は経験豊富な東部沿岸地域へ集中していくことになる。現在、施設栽培は新疆政府によって推奨され、生産量は増加している。その農産物の販路確保、拡大のためには正規の輸出入手続きの経験と信頼性の有無、そしてカザフスタンの市場、販売業者との関係構築が重要な課題である。カザフスタンの市場・販売業者の信頼を得るための方策の一つとして、まずは新疆の各地元政府による供給・品質保証や、両国をつなぐパイプ的役割を積極的に担うことがあげられるのではないかと考える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673502720
  • NII論文ID
    130005473884
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100245
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ