まちづくり三法下における商業機能の動向と中心市街地活性化政策の課題
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- 加藤 拓
- 早稲田大学・院
書誌事項
- タイトル別名
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- A Conflict between the Trend of Commerce and the Policy of City Center Activation under the Three Acts on City Planning
- ―愛知県豊橋市を事例として―
- -A case study of Toyohashi City in Aichi Prefecture-
説明
1.はじめに 近年,地方都市において中心市街地の空洞化が進み,その問題が随所で認識されるようになった.2000年に出揃ったまちづくり三法は,大型店の郊外化と大規模化を助長する一方で,中心部の小売商業振興を期すという矛盾を抱えていた.矛盾を抱えつつも,2006年の法改正を経ていまだに続けられている中心市街地活性化政策はどのような意義を持つのかという問題意識のもと,多岐に渡る中心市街地活性化の中でも商業活性化に主眼を置く.以上を踏まえ,本研究では地方都市を対象とし,まちづくり三法以降の商業機能の動向と,商業活性化事業に着目した上で,地方都市における中心市街地活性化を実証検証するものである.調査対象地域は,地方都市であり,商業活性化事業を一貫して実施している愛知県豊橋市を選定した.調査は,統計資料及び行政資料を用いた分析と,関係者11名への聞き取り調査を実施した.2.豊橋市の商業の現状 大店法の緩和以降,豊橋市の郊外部及び周辺都市に大型店が数多く立地展開し,そこに居住空間の郊外化等が重なることで,消費の郊外シフトが発生していた.つまり,豊橋市中心部に流入していた消費が郊外部や周辺都市の大型店へシフトしたのである.消費の郊外シフトに直面することとなった豊橋市の中心市街地は,小売業商品販売額や歩行者通行量などが10年間で半減したように,その空洞化傾向は顕著である.3.商業活性化事業をめぐる諸様相 このような中心市街地の地盤沈下を補うことを期待された中心市街地活性化法は,効果を発揮できなかった.豊橋市の場合,その理由は以下の4点に集約される.①TMOが資金面に弱い弱点を克服できず,実行力を欠いたこと.②中心市街地の範囲設定を狭めきれなかったこと.③資金の重点的な投入が行えていなかったこと.④その背景に,指定地域の周辺部に市の政治的実力者を含む商業施設が立地することである.以上を総合すると,国の基本方針と市の政治的実力者との間で板挟みとなった豊橋市は,基本計画の作成において主体性を発揮できなかったと結論づけられる.つまり,中心市街地活性化法の枠組みは,当初から地方自治体が主体性を発揮しにくい構造的な問題点を含んでいたため,当初の目的を実現できなかったと判断できる.
収録刊行物
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- 日本地理学会発表要旨集
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日本地理学会発表要旨集 2012s (0), 100165-, 2012
公益社団法人 日本地理学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680673503616
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- NII論文ID
- 130005457117
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可