「農業・農村体験」を通じた小学校社会科の教材開発

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Teaching materials development of Social studies based on the Agriculture and Farm Village Experience Program

抄録

小学校の第5学年社会では,日本の産業に関する単元において,第1次産業の中心を担う農業について学ぶ。しかし,産業のような経験のない,あるいは馴染みのない事物・事象を取り扱う際には,児童の興味関心が低下するという問題があり,指導するのは簡単ではない。とくに,産業従事者の苦労や工夫といった,経験者にしかわからないような事象や感覚,すなわち産業従事者の目線での指導に関しては,どのような教材でも対応することができないという問題がある。この問題を解決するためには,産業従事者自らが授業をおこなうことが理想であるが,現実的に難しいことは自明である。そこで,実際に教員が産業に関する作業を体験し,それを活かした教材・授業開発をおこなえば,既述した指導法の諸問題はいくらか解決できる可能性があると考えた。<br> 以上の背景から,大分大学地理学教室では,教員志望学生を対象とした「農業・農村体験」を企画・実施した。本研究の最終目的は,「農業・農村体験」に参加した教員志望学生が,その体験を活かした教材・授業開発(小学校社会科)をおこない,実践授業を試みることである。本発表では,実践授業に向けた第一段階として,教員志望学生が教材開発のために水田近傍に設置した,定点カメラの成果について報告する。<br> 2013年5月5日に撮影した代かきは,構図の関係上,軽トラックの荷台に三脚を固定し,撮影間隔5秒で撮影した。撮影時間は約2時間9分で,2分35秒(編集前)のインターバル動画として記録された。インターバル動画を再生してみると,撮影時の天候が良かったため画質も良く,トラクターが進むにつれて水田表面の凹凸が無くなっていく様子が,順調に撮影されていた。また,水田を回りながら外側から内側に向かうトラクターの動きも捉えられていた。<br> 2013年5月10日に撮影した,参加学生の田植機を使用した田植え作業は,撮影時間が約58分間で,約1分(編集前)のインターバル動画として記録された。撮影当日は,天候が悪かったため(雨)映像がやや暗く感じられるが,結果的に,雨天時の農作業風景を捉えたという意味では,教材としての価値は高いと考えられる。また,参加学生が田植機を押しながら水田を歩行し,機械が通過する度に苗が植え付けられていく様子は,歩行形田植機の難しさや苦労をよくあらわしていた。<br> 2013年5月12日から9月13日(124日間)のあいだ,稲の成長過程・速度と季節変化を撮影した画像は,約12秒(編集前)のインターバル動画として記録された。カメラAでは,背景の浅間山を構図に含めることで,稲の成長過程・速度と季節変化との対応関係を捉えようとしたが,インターバル動画を見る限りでは,撮影期間中に浅間山の木々に大きな変化は無かった。一方で,稲の成長過程・速度に関しては,カメラBも含めて順調に撮影されており,田植えから稲刈りまでの水田の時間変化(たとえば,水の管理)も含めてうまく捉えられていた。<br> これら定点カメラで撮影されたインターバル動画は,教材としての価値が高く,新たな映像タイプの教材(視聴覚教材)として活用できる可能性が示された。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673504640
  • NII論文ID
    130005473885
  • DOI
    10.14866/ajg.2014s.0_100244
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ