横浜市における買い物難民問題の現状と課題

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  • The present conditions and problem of the shopping refugee issue in Yokohama City

抄録

1.研究課題と目的<br>近年,人口減少や高齢化に伴うスーパーおよび食料品店の減少により,買い物難民問題が全国的にも問題となっている.農林水産省の報告書によると,日常的な買い物が困難である生活者が600万人程度と推計されており,ますます重要な問題となっている.これまでの既存研究では地方都市においては郊外における大型商業施設の設置に起因する中心市街地の商店街の空洞化の進行によりフードデザート問題が顕在化していることを指摘している.しかし,大都市郊外には,高齢化の進んだ団地を中心に,過疎化とは異なる形での難民問題が発生している.横浜市をはじめとする東京大都市圏郊外の住宅団地はもともと起伏の激しい地形を切り開いて開発が進められた地域が多い点や,建設からの経年に連れて居住者が一斉に高齢化する問題が顕在化している点から,空き家問題をはじめとした多くの問題を抱えている.このような地域に居住する住民にとって日常の買い物行動における移動コストの負担軽減,特に勾配・坂道という移動抵抗要因をどう解決するかがフードデザート問題解決の大きな軸になっている.そこで本研究では横浜市を対象として現在の食料品店の分布傾向を踏まえ,買い物難民問題が顕在化している地域を把握することを目的としたい.その際,①高齢化,②地形の標高差の2点がどの程度の影響を与えているかを併せて検討する.このことから過疎地や地方都市とは異なる,大都市圏郊外における買い物難民問題の現状の課題について明らかにする.<br>2.研究方法<br>まず,フードデザート地域を選定するにあたり,GISを用いて食料品店から半径500m圏外の地域を選定する.食料品店については2014年11月時点において発行されたNTTタウンページのスーパーおよび食料品を扱う生活協同組合を対象とする.次に選定地域内の高齢者人口および高低差の空間的分布の特徴を明らかにする.高齢者人口に関しては横浜市がオープンデータとして公表している2010年国勢調査のメッシュデータより65歳以上人口を用いて分析する.高低差については国土地理院の基盤地図情報の標高データを用いて先述した各メッシュ内の高低差を算出し,分析した.<br>3.分析結果<br>食料品店の多くが駅周辺に分布していることもあり,フードデザート地域は駅から離れた地域に点在していた.高齢者が多い地域は西部から南部にかけて多く,特に旭区,港南区,金沢区に多い.完成から30年経過し,かつ住戸数500 戸以上の団地との関係を見ても,高齢者が多い団地も存在している.高低差が40m以上の地域は金沢区,栄区等の南部の市境付近を中心に多かったが,保土ヶ谷区や栄区の公田団地では高齢者の多さも併せて見られる地域があるなど,買い物難民問題の解決に坂道をはじめとした移動コストの負担軽減の必要性があることが確認できた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680673532160
  • NII論文ID
    130005490206
  • DOI
    10.14866/ajg.2015a.0_100184
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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