日本海側ブナ林における常緑低木3種の共存パターン
書誌事項
- タイトル別名
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- The coexistence mechanism of three species of evergreen shrub in beech forest of heavy snow area
抄録
日本海側ブナ林における常緑低木3種の共存パターン早川健広(新潟大 自然)、箕口秀夫(新潟大 農)1 はじめに日本海側多雪地域のブナ林は、林床植生によりササ型林床と低木型林床に区分できる。このうち低木型林床には同じニッチを占める数種の常緑低木種が同所的に生育している。そのため「同じニッチを占める多種はニッチ分化により共存可能である」と考えると(平衡仮説)、低木型林床を構成する常緑低木の共存パターンはニッチ分化によるものと予想される。そこで、本研究では低木型林床を構成する代表的常緑低木種で、特に生活様式の類似したヒメアオキ、エゾユズリハ及びヒメモチを対象とし、この3種の共存パターンについて以下の作業仮説を検証した。〇 大きなスケール(群落スケール)での水平分布におけるニッチ分化により共存〇 小さなスケール(植生パッチスケール)での水平分布におけるニッチ分化により共存〇 階層におけるニッチ分化により共存2 調査地と調査方法調査は、山形県小国町温身平ブナ天然林に設定されている3.3haの生態系長期継続試験地で行った。試験地内に60m_から_90mの調査ラインを20m間隔で6本、計420m設定した。そのライン上に2m×2mの調査枠を230ヶ所設置し、それぞれで植生調査と環境調査を行った。さらに試験地内の任意の場所に4m×4mのコドラートを6ヶ所設置し毎木調査を行った。植生調査は自然高2m以下の出現植物種名を記録し、大きなスケールにおける3種の分布重複度と分布している植生の類似度をそれぞれ野村・Simpson指数とCΠ指数で解析した。環境調査は調査枠の中心で土壌含水率と林冠状態の評価を行い、クラスカル・ウォリスの検定を行った。毎木調査は各コドラートで3種の種名、地際位置、自然高及び樹幹長(2コドラートのみ)を調査し、3種の小さなスケールにおける水平分布様式をIδ指数と集中斑サイズから、分布相関(分布の重複度)をRδ指数で解析した。また、3種の集中班サイズの差異についてクラスカル・ウォリスの検定を行った。そして、3種の階層構造については、自然高、樹幹長、樹幹長比(自然高/樹幹長)の差異についてスティール・ドワースの全群比較を行った。3 結果と考察 3種は分布環境の解析とCΠ指数から大きなスケールでは類似した環境に分布していた。そして、野村・Simpson指数から分布が重複していた。一方、小さなスケールでは3種とも集中分布を示し(図-1,2)、集中班サイズに有意差が認められなかった。しかし、分布相関から3種は概ね独立に分布していた(図-3)ことから、小さなスケールで3種は異所的に分布している傾向があると考えられた。したがって3種の水平分布において、大きなスケールではニッチ分化が生じていないが、小さなスケールでは弱度のニッチ分化が生じていると考えられる。階層構造において自然高ではヒメアオキ・ヒメモチとエゾユズリハに有意差が認められた。そして、樹幹長ではエゾユズリハとヒメモチに有意差が認められ、ヒメアオキは他2種と有意差が認められなかった。また、樹幹長比では3種で有意差が認められなかった。ここで自然高を利用階層、樹幹長と樹幹長比を伸長様式と考えると、エゾユズリハとヒメモチには伸長様式、利用階層の違いによるニッチ分化が生じていると考えられる。ヒメアオキはエゾユズリハと伸長様式に違いがないものの利用階層の違いによるニッチ分化が生じているが、ヒメモチとは利用階層、伸長様式ともに違いがなくニッチ分化は生じていないと考えられる。 以上のことから、ヒメアオキ・ヒメモチとエゾユズリハには小さなスケールの水平分布における弱度のニッチ分化と階層におけるニッチ分化の複合的共存パターンが存在すると考えられる。しかし、ヒメアオキとヒメモチには小さいスケールの水平分布における弱度のニッチ分化以外に他のニッチをめぐる分化との複合的共存パターンかまたは外的攪乱などによる共存パターン(非平衡仮説)が存在すると考えた。
収録刊行物
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- 日本林学会大会発表データベース
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日本林学会大会発表データベース 115 (0), P5046-P5046, 2004
日本森林学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680679163136
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- NII論文ID
- 130007019242
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可