スギ花粉アレルゲン遺伝子Cry j 2におけるプロモーター領域の構造解析
書誌事項
- タイトル別名
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- Characterization of the promoter region of Cry j 2,the gene for pollen second major allergen in <I>Cryptomeria japonica</I>
抄録
1、はじめに<BR>スギ花粉症が大きな社会問題となっており、花粉の少ないスギ品種やアレルゲン量の少ないスギ品種の選抜・育成など、早急に育種的対策を講じることが求められている。アレルゲンの少ないスギ品種の選抜には、スギ花粉アレルゲン遺伝子のCry j 1およびCry j 2について、発現特性を調べるとともに構造を解析する必要がある。本研究ではアレルゲン遺伝子のCry j 2に注目し、その構造および発現様式の解析を行うとともに、発現量と遺伝子構造の関連性を明らかにすることを目的として、プロモーター領域の構造解析を行った。<BR>2、材料と方法<BR> 森林総合研究所内の樹木園に植栽されている九州から関東の太平洋側から選抜されたスギの精英樹30クローンにから、2000年3月に採取した成熟花粉から全RNAを抽出した。また、2000年5月に当年生針葉を採取し、その新芽より全DNAを抽出した。<BR>__丸1__遺伝子数の推定<BR>Cry j 2のコピー数を推定するため、スギのゲノムサイズを11pg(Hizume and Kondo 2001)としたときに、5㎍の全DNAに対して0.5,1,2,4,8コピーとなるようにcDNAを希釈して、ゲノムDNAとともに電気泳動し、サザン・ハイブリダイゼーションを行った後、シグナルの強さを比較した。<BR>__丸2__タンパク質コード領域における変異<BR> 既報の塩基配列からコード領域におけるアミノ酸置換を伴う塩基置換が<I>Eco</I>R__V__による切断の有無で解析できることを利用して5㎍の全DNAを電気泳動し、Cry j 2のcDNAクローンをプローブとしてRFLP分析を行った。<BR>__丸3__プロモーター領域の構造解析<BR> 既報のCry j 2の塩基配列に基づいて、Cry j 2cDNAの5´側にPCR用のプライマー(Reverse)を設計し、ゲノム上の未知領域をPCR法により特異的に増幅できるTaKaRa LA PCR<SUP>TM</SUP> <I>in vitro<I> Cloning Kitを用いてプロモーター領域の単離を行った。これで得られたDNA断片をTAクローニングシステム(Invitrogen)を用いてクローニングし、塩基配列を決定した。<BR>__丸4__発現量の変異<BR>全クローンのうち、花粉から抽出したRNAが一定量以上得られた17クローンについて、クローン間におけるmRNA量の蓄積量を比較するために、Cry j 2のcDNA断片をプローブとしてノーザン・ハイブリダイゼーションを行った。<BR>3、結果と考察<BR>__丸1__サザン・ハイブリダイゼーションで得られたゲノムDNAのシグナルと希釈したcDNAのシグナルを比較した結果、Cry j 2はゲノムあたり1コピー存在すると推定された。<BR>__丸2__RFLP分析の結果、<I>Eco<I>R__V__による切断の有無に対応する、長短2本の断片が検出され、精英樹クローンは2本の断片をホモ接合またはヘテロ接合の形で保有していた。また、Cry j 2のコピー数にはクローン間で差がないと思われる。この分析で検出される塩基置換は、Cry j 2タンパク質のN端から34番目のアミノ酸におけるVとDとの置換に対応するが、シグナルペプチド領域に存在するため、アレルゲンの活性や発現量には直接影響を及ぼさない可能性がある。<BR>__丸3__PCRを用いてCry j 2のプロモーター領域を増幅した結果、長短2種類に分類できる4個のDNA断片が得られた。得られた断片の塩基配列を決定した結果、領域約300bpの転写領域と転写開始部位の上流約1.3kbpのプロモーター領域を含んでいた。長い方の断片には転写開始部位の上流470bpの位置に、短いDNA断片には無い138bpの塩基配列が存在していた。<BR>__丸4__ノーザン・ブロット法により、Cry j 2のmRNAの量を比較した結果、クローン間で大きな違いがあることが判明した。Cry j 2タンパク質の蓄積量には個体間変異があると報告されている(澤谷ら1993)ため、mRNAの蓄積量とタンパク質量との関連について今後解析を行う必要があると思われる。また、現時点では、Cry j 2の遺伝子数やコード領域の配列に発現量の違いに結びつくような変異が検出できなかったが、新たに解析したプロモーター領域には構造上の大きな違いが存在し、発現量の変異に結びつく可能性があるため、発現量とプロモーターの構造との関連性についても解析を進める必要があると思われる。
収録刊行物
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- 日本林学会大会発表データベース
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日本林学会大会発表データベース 114 (0), 348-348, 2003
日本森林学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680679377024
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- NII論文ID
- 130007019435
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可