模型木と降雨装置を用いた野外での遮断蒸発量測定実験

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抄録

これまでおこなわれてきた森林における遮断蒸発量の観測結果として,降雨強度と遮断蒸発率の負の相関関係(Llorens et al.,1997,Xiao et al.2000)や,風速や飽差,葉面積指数(LAI,PAI)と林内降雨量の正の相関関係(Park et al., 2000, Dijk and Bruijnzeel, 2001)といった特性があげられている.しかし,これらの結果は,観測方法や解析方法,観測精度にもばらつきがあり,遮断蒸発特性に関する共通した結論を導くのは難しいと考えられる.そこで本研究では,降雨条件や森林構造を任意に変化させ,その条件での林外降雨量と林内降雨量の残差から遮断蒸発量をもとめることによって,遮断蒸発量と各条件とのかかわりを明確にし,遮断蒸発量の決定要因を明らかにする実験を試みた.本研究では,数十本単位の模型木を用いて模擬森林をつくり,その森林構造の変化と森林に与える降雨の条件に注目して実験をおこなった.森林構造は,立木密度や樹冠被覆面積を変化させずに枝葉の密度を変えることで変化をつけ,降雨条件は強度に変化を与えた.そして,実験の結果から降雨条件や森林構造が遮断蒸発量に及ぼす影響を検討する.実験台に高さ60cmのクリスマスツリーの模型木を並べ,その上から人工降雨を降らせた.林内降雨量は,模型森林の林床に設置したアクリルトレイに集水させ,転倒枡を用いて自記記録をした.気象条件(気温,相対湿度,風速,純放射)は実験を行った時の自然状態であり,いずれも模型森林の樹冠上で測定した.森林構造は模型木のPAI(Plant Area Index)で表すこととし, 9.1,7.2,4.5,2.7に変化させた.降雨時間は3時間または1.5時間で,実験回数は全部で12回である.実験ごとの林外降雨量と林内降雨量は,正の相関関係となり,林内降雨量は林外降雨量の38%から96%(平均72.5%)となった.そして遮断蒸発率はPAIが増加すると増加し,降雨強度が増加すると減少することがわかった.さらに,PAIが同じ時は降雨強度の大小で遮断蒸発率が決定され,降雨強度が同じ時はPAIの大小でほぼ遮断蒸発率の大小関係も決定されていることが示された.純放射量,飽差および風速と遮断蒸発率には明確な関係が見られなかった.

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  • CRID
    1390282680679588352
  • NII論文ID
    130007019525
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.p4048.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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