直径の違いを考慮した根呼吸量の測定

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  • Measurement of root respiration according to root thickness

抄録

1. はじめに<BR>森林生態系における炭素収支を考える上で、土壌呼吸量からの根呼吸量の分離は不可欠であるが、手法や場所の違いにより大きな違いがある。この研究では、根を掘り出して、大きさにより分別し、呼吸量を測定した。この結果と、根量や土壌呼吸量の測定を組み合わせることで、試験地での土壌呼吸量に占める根呼吸量の寄与率を求めることを試みた。<BR>2. 材料と方法<BR>京都府相楽郡山城試験地を調査地とした。年平均気温は15.5℃、年間降水量は1449.1mmであり、針葉樹を含む広葉樹の二次林である。土壌は花崗岩由来の未熟土的褐色森林土である。<BR>2-1 根直径の違いによる二酸化炭素放出量の違い<BR>試験地を代表する広葉樹としてQuercus serrata(DBH=32.1, 24.3, 17.3, 9.1cm)を、常緑樹として Ilex pedunculosa(DBH=24.9, 8.1cm)を抜倒し、根系を掘り上げ、サンプルを切りだした。サンプルは直径にもとづいていくつかの階級にわけて呼吸量を測定した。呼吸量はIRGA(LI_-_820)、ポンプ、アクリル製チャンバーからなる測定装置(Jomura, 2004)を用いて密閉法で測定した。熱伝対を用い、チャンバー内の温度を測定した。 2-2 土壌呼吸との対応<BR>土壌呼吸量を測定するために、2002年9月に試験地斜面に2×3mのプロットを設け、その中に直径20cmの塩ビ製円筒を7個設置し土壌呼吸測定箇所とした。土壌呼吸量は上述の方法を用い、チャンバーを直径20cmの円形のものに変えて測定した。地温は熱伝対を用いて、土壌含水率はTDRを用いて測定した。測定は2002年9月から10月にかけて3回行った。土壌呼吸測定後、測定箇所直下を掘り取った。掘り取った土壌は持ち帰り、含まれる根を直径(D)により2mm≦D、2mm<D≦5mm、5mm<D≦20mmに分け乾燥重量を測定した。各階級の直径の中央値をその階級の平均直径とし、根直径と呼吸量の関係式から各階級の根呼吸量を算出した。<BR>2-3 流域全体の根呼吸量の推定<BR>流域における根量を推定するために、根系を掘りとって、掘り取った根の直径を5cmごとにすべて計測した。これをもとに樹木の胸高直径と各階級(5mm<D≦20mm、20mm<D≦50mm、50mm<D、根株)の根量との関係式を作成し、この推定式を用いて流域における各階級の根量を推定した。細根(2mm≦D、2mm<D≦5mm)に関しては、2-3で用いた直径20cmの円形土壌ブロックの根量および、流域内3ヵ所をあわせた合計10箇所をサンプリングしその中に含まれる根量を測定して単位面積あたりの根量とした。以上の結果と直径階級ごとの根呼吸量から流域における根呼吸量を推定した。<BR>3. 結果と考察<BR>3-1<BR> 根直径が大きくなるほど表面積あたりの根呼吸量は大きくなった。重量あたりの根呼吸量は直径が小さくなるほど大きくなる傾向が見られた。細根においては特に大きな値を示した。<BR>3-2<BR>測定した土壌呼吸量とその下部に含まれる根量との間には正の相関があった。すなわち根量が多い測定箇所ほど土壌呼吸量は多く、根量が土壌呼吸量の空間的変動の重要な要因であることがうかがえる。細根に着目するとその関係はより明瞭になった。これは細根が呼吸量に対して高い寄与率を持つことを示唆している。根量に直径階級ごとの根呼吸量を乗じて各測定箇所における根呼吸量が計算された。ここでの土壌呼吸に占める根呼吸量の割合は43.4(24.8_-_65.4)%であった。<BR>3-3<BR>試験地における直径階級ごとの根呼吸量を求めると、根呼吸量全体のうち半分以上を細根からの呼吸量が占めており、細根が根呼吸に関して重要な役割を果たしていることが示された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680679800192
  • NII論文ID
    130007019684
  • DOI
    10.11519/jfs.115.0.p1049.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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