ブナ林土壌の炭素蓄積量と腐植について

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  • study on carbon accumulation and humus in the soil of a japanese beech forest

抄録

1. 目的森林は土壌中に地上部に比べ,多くの炭素量を蓄積している.例えば,尾瀬のブナ林土壌は地上部の4倍の,オオシラビソ林では3倍の炭素量を蓄積していた.しかし,土壌中の炭素の挙動については未解明な部分が多い.本研究では冷温帯林のブナ林と湿地性の低木林の土壌において,土壌炭素量と腐植の関係について調べた.2. 方法調査地は,滋賀県北東部伊吹山地に位置する金糞岳のブナ林,湿地性の低木林である.調査地の年平均気温は6.2℃,年降水量は2500-3000mmである.湿地性の低木林はブナ林と同じ尾根上の凹地に成立するエゾユズリハ,クロソヨゴなどが散生する,地形的要因により低層湿原の性質を示し始めた林分である. 各調査地において, A0層を各層位(L,F,H)ごとに50cm四方の枠をおいて,無機質土壌のA,B層を深度ごとに100cm3の採土管を用いて,それぞれ採取した.実験室に持ち帰り,各試料の採取時の重量を測定し,風乾し,風乾試料のふるい分けを行い,れき・根・有機物残滓・細土に選別した.細土について,全炭素を CNコーダーで分析した.調査地の土壌炭素蓄積量(t-C/ha*(合計深度)cm)は次式によって推定した.炭素蓄積量=(風乾重×炭素含有率/採取量×深さ)土壌腐植の画分を名古屋法を参照して,遊離腐植酸・結合腐植酸をCNコーダーで,遊離フルボ酸をTOCで測定した.3. 結果土壌炭素蓄積量はブナ林が148.33t-C/ha*(8+70)cm,湿地性の低木林が519.73t-C/ha*(2+70)cmであった.ブナ林における腐植の各画分は無機質土壌中の炭素量に対して遊離腐植酸より遊離フルボ酸の方が常に高い割合を示した.一方,湿地性の低木林においてはグライ層に達するまで遊離フルボ酸より遊離腐植酸の方が常に高い割合を示した.4. 考察 ブナ林における土壌炭素含有率は深くなるにつれて指数関数的に減少する傾向が見られた.しかし,湿地性の低木林の炭素含有率はグライ層が認められる深さまでは減少することなく高い値を維持した.この湿地性の低木林の基層はほとんどが分解の遅い植物遺体から成っていることによると考えられる. 土壌炭素蓄積量はブナ林ではフルボ酸の量が,湿地性の低木林では腐植酸の量が影響していることが考えられる.低木性の湿地林はブナ林と同じブナ林帯に成立している林分であるが,尾根上の凹地という地形的要因により有機物の分解が抑制され,腐植酸を生成する.そのことが土壌中の炭素量蓄積に関係していると考えられる.

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  • CRID
    1390282680680146048
  • NII論文ID
    130007019899
  • DOI
    10.11519/jfs.114.0.167.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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