The Coleoptera community of remaining beech forest of Sado Island

  • Ikeda Hiroshi
    Forest Zoology Laboratory of Tokyo University
  • Homma Kosuke
    Field Center for Sustainable Agriculture and Forestry Sado Station of Niigata University
  • Kubota Kohei
    Forest Zoology Laboratory of Tokyo University

Bibliographic Information

Other Title
  • 佐渡島のブナ残存林における地表徘徊性甲虫群集

Description

1.目的<BR> 島には特徴的な生物相が存在することが一般的に指摘されており、佐渡島においても、暖地性の種が多く分布し、独特のファウナが構成されている。新潟本土と比較すると、トンボや甲虫において種数が極端に少なく、多様度が低いことが報告されている。<BR> 佐渡島のブナ林は、かつては広範囲にわたって存在していたが、人が薪炭林や用材林として伐採を繰り返し、ウシの放牧の影響も受けて減少してしまっている。今では、標高の高いところや保存されてきたところに、パッチ状にわずかに残されているだけである。このブナ残存林において、移動能力の低い地表徘徊性甲虫群集を調べることは、かつては佐渡島に広く存在していたと思われる生態系を解明することにつながると考えられる。<BR> そこで本研究では、佐渡島及び本土のブナ林において地表徘徊性の甲虫を捕獲し、それを比較することにより、佐渡島の地表徘徊性甲虫群集の特異性について検討した。<BR><BR>2.方法<BR> 佐渡島のブナ林で9箇所、本土のブナ林に関しては、群馬県の三国山で3箇所、谷川岳で2箇所、丹原高原で2箇所の計7箇所において、10×20mの調査区を設定した。各調査区において、ピットフォールトラップを2m間隔で格子状に50個設置し、48時間後に回収した。調査は2002年の6月下旬と8月下旬の2回行った。捕獲した甲虫は種まで同定して解析に用いた。また、環境条件として、標高及び優占している下層植生を調べた。6月の調査では、谷川岳の2地点は雨が強く危険であったために回収することができなかった。<BR><BR>3.結果と考察<BR> 佐渡島では38種1471個体が、本土では47種689個体が捕獲された。佐渡島ではオサムシ科、コガネムシ科が、本土ではオサムシ科が多かった。また、6月において、シデムシ科が佐渡島、本土ともに多かった。<BR> 捕獲個体数を常用対数に変換した値を用いたDCAにより、調査区間の甲虫群集の類似性を調べた。佐渡島と本土は第1軸によって分類され、6月と8月が第2軸によって分類された。本土はばらつきが大きかったが、佐渡島は比較的まとまっており、季節ごとのまとまりも強かった。つまり、佐渡島では各調査区間の類似性及び同じ季節内の類似性が高い。原因として、佐渡島のブナ林は、もともとあまり多様な甲虫群集をもっていなかったことと、パッチ化してからの経過時間が短く、近年まで調査地がつながっていたことが考えられる。種との関係を調べると、佐渡島ではセンチコガネ、マルガタツヤヒラタゴミムシ、ホソヒラタシデムシが、本土ではクロナガオサムシ、ミヤマナガゴミムシが多かったために、佐渡島と本土が分類されていた。また、8月にキンイロオオゴミムシ、コクロツヤヒラタゴミムシ、クロナガオサムシが、6月にクロオサムシが多かったために、6月と8月が分類されていた。<BR> 科別の種数を、佐渡島と本土で比較すると、佐渡島においてオサムシ科の種数が特に少なかった(佐渡島16種、本土28種)。オサムシ科をさらに族レベルで比較したところ、Pterostichini族(佐渡島5種、本土11種)及びPlatynini族(佐渡島4種、本土10種)で特に種数が少ないことがわかった。また、今回の捕獲調査において、23種が佐渡島でのみ捕獲され、固有亜種としては、サドホソアカガネオサムシ、サドクロオサムシ、サドマイマイカブリが捕獲された。逆に佐渡島では捕獲されず、本土のみで捕獲された種は31種であった。<BR> 相対優占度を佐渡島と本土で比較すると、佐渡島のほうが優占度の偏りが大きい傾向がみられた。島の生物は、種数が少ないために種間競争から開放され、大陸種に比べて広範囲の生息場所を利用する傾向がある。佐渡島においてもこの傾向がみられ、種数が少ないために、センチコガネやコクロツヤヒラタゴミムシ等のごく限られた種の個体数が多くなり、優占度の偏りが大きくなっていた。センチコガネの大量発生は、ウシの放牧によって大量の糞が餌資源として供給されていることが考えられる。<BR> 以上より、佐渡島のブナ林の地表徘徊性甲虫群集は、本土の甲虫群集に比べて多様性が低いことが示された。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680680162432
  • NII Article ID
    130007019912
  • DOI
    10.11519/jfs.114.0.139.0
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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