海水準上昇を伴う河川洪水氾濫解析における背水効果の分析

書誌事項

タイトル別名
  • Backwater effect caused by sea level rise in fluvial flood simulation

説明

洪水は世界各地で様々な形態を取り人間に被害を及ぼしてきたが、一部の地域では今後の気候変動により洪水被害が深刻化する恐れがある。また沿岸域やデルタ域では気候変動による海水準上昇により、河川洪水の悪化も懸念されている。 <br>洪水被害の将来予測において河川モデルを用いた洪水氾濫シミュレーションは有用で、これまで気候変動下の洪水リスク評価や地形に基づく海水準上昇の影響評価に関し研究がなされてきた。しかし海水準上昇を考慮した河川洪水氾濫の解析はまだ非常に研究例が少ない。本稿では著者らによるこれまでの研究を発展させ、ガンジスデルタを対象として海水準上昇を考慮した河川洪水氾濫解析の中で、背水効果が果たす役割を紹介する。 <br>洪水氾濫解析には全球河川氾濫モデルCaMa-Floodを用いた。このモデルでは運動方程式として圧力項を含む局所慣性方程式が用いられているため、海水準上昇を考慮した流量計算を実行することができる。海水準上昇実験においては背水効果の有無で2種類の実験を行うことで、背水効果が洪水氾濫に及ぼす影響を可視化する。<br> 海水準上昇実験に先立ち、モデルによって計算される河川流量を観測値と比較して、モデルの妥当性を検証した。モデルが観測値のピークや季節変動といった特徴をよく再現していることが分かった。<br> 海水準上昇実験結果を年最大浸水深マップで検証したところ、背水効果を考慮した場合は海水準上昇によって広範囲にわたって浸水規模が増大していることが明らかになった。背水効果を考慮しない場合、浸水深の増加は沿岸域のみであった。<br>ガンジス川上流域・中流域・河口部の3点での日平均水面標高計算結果を、1998年洪水の時系列で図示し解析した。背水効果を考慮することにより、海水準の上昇分以上に水面標高が増加するケースが確認された。<br>これらの結果は、河口部における海面水位の増加が、局所慣性方程式内の圧力項の変動として流量計算に反映され、洪水規模の増大として表されたものである。以上より、海水準上昇を考慮した河川洪水氾濫解析における、局所慣性方程式のような高度な水理方程式の必要性が示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688619648
  • NII論文ID
    130005491821
  • DOI
    10.11520/jshwr.28.0_100051
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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