人工降雨の評価に適した冬季の雲の条件

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  • Conditions of winter-season clouds suitable for evaluating cloud seeding

抄録

人工降雨の研究は世界各国で半世紀以上にわたって実施されているが,人工のシグナルをどのように抽出するかが人工降雨の評価法を確立する上で極めて重要である.その評価法の代表格が統計的手法あるが,人工のシグナルが自然の変動に比べて小さく,自然の降水の変動の中に埋め込まれるために,判定が極めて困難である.従って,人工降雨の結果を評価するためには,自然の降水の影響をできる限り除去できる気象条件を選んで,実験を実施することが重要である.そこで,本研究では,これまで人工降雨実験を多く実施してきた北部九州福岡領域を対象に,自己組織化マップを適用して冬季の気象条件の基本パターンを認識し,冬季の積雲の降水特性を把握し,人工降雨の評価に適した,‘厚さは十分でも降水活動が不活性な雲’の特徴を抽出した. 自己組織化マップの学習に利用する気象要素は,1日2回(09,21JST)の福岡の高層気象観測データから,850hPaの気温,湿数,風速(東西,南北成分),700hPaの湿数,500hPaの気温である.そして,学習によって得られた気象条件のパターンを,気象衛星赤外画像から得られる輝度温度(雲頂温度に対応:低いほど雲頂温度が低い),エコー頂高度(鉛直のエコー分布の最も高い高度),雲厚を気象条件のパターンと対応させる.本研究の対象時期は,前年12月,1~3月までの寒候期を扱い,自己組織化マップの学習に用いる期間は,1998年12月から2008年3月とする. その結果,寒気が並みか弱い場合の冬型気象条件では,福岡では厚い雲の発生の割合が少なく,多くのイベントで,雲頂が-15度以上,雲厚が1600m以下(多くは厚さ1200m以下)であった.その結果として,降水面積率が5%未満,つまり,対象領域の5%未満しか降水エコー(エコー頂)が検知されていないことがわかった.即ち,福岡では,厚さが1km程度で液体雲水量が豊富に存在する雲が発生する可能性があるが,雲内温度が-15度以上のため,自然で氷晶の数が少なくなり,結果的に冷たい雨のメカニズムに基づく降水活動が不活性となると考えられる.この場合,自然のエコーも少なくなる.従って,人工降雨によって氷晶を人工的に導入することによって,自然のエコーに埋もれることなく,人工エコーを発生させることが可能になる,つまり,人工降雨の効果を最大限に発揮することが期待できる.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688800768
  • NII論文ID
    130004628359
  • DOI
    10.11520/jshwr.25.0.134.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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