山岳域の水熱収支解析に関する検討

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タイトル別名
  • Land Surface Analysis in Mountanous Area

抄録

中央アジアでは,山岳地で冬季を中心に降った降雪が夏にかけて融解することで灌漑による下流側の水需要が賄われている.そのため,水資源管理上,山岳域での融雪過程を正確に解析することは重要であるが,陸面過程モデルによる水熱収支解析では冬季の融雪期が観測値より早い等の問題があった.そこで本研究では,中央アジアに位置するZaravshan川流域において山岳域での水熱収支解析手法について検討する.山岳域の特殊な水熱環境を考慮することで季節ごとに河川流量に対する各標高帯からの融雪寄与度を合わせることを目指し,現地の河川流量データや衛星解析を通した検証を行う.解析は陸面過程モデルSiBUCを使用し,山岳域の特徴を表現するために標高モザイクスキームの開発と気象データの標高補正の二種類のモデル改良を行った. 標高モザイクとは,山岳域での解析においてサブグリッドスケールの標高帯の混在を考慮するためのスキームである.一般的な陸面過程モデルにおいてモザイクスキームは土地利用の混在を考慮するために用いられるが,山岳域では標高の方が水熱収支に与える影響が大きいため,標高1000mを境としてそれより高いメッシュにおいて採用した. 陸面過程モデルSiBUCの入力データとして必要な気象データの中で標高補正を行っていたのは気温と気圧のみであった.本研究では,長波放射にも気温に従った補正を与え,比湿の標高補正では相対湿度が保存されるように設定した. 以上の改良を行った後,従来手法と本手法とで月平均河川流量を比較すると,新しい手法によって融雪期は一ヶ月ほど遅れた.しかし,未だ流量のピークには観測値と2カ月程度のずれがある. 標高帯別の融雪期を調べるためMODISによる衛星解析と比較すると,標高3500mまでにおいて大幅に改善されていた.河川流量では差が大きいのに対して融雪完了日で改善効果が大きい事は,本手法によって氷河域以外での改善効果が高かった事を示す. 本研究では,気象データの標高補正に比べて標高モザイクの改善効果は比較的少なかった.その理由は,今回使用した標高データが5km解像度のサブグリッドスケールの標高の混在を考慮できていなかったためと考えられる.今後はより高解像度DEMの使用を検討し,短波放射についても山岳域において日照時間が減少することの効果を考慮することを検討する

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688871424
  • NII論文ID
    130005481986
  • DOI
    10.11520/jshwr.27.0_100052
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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