現業アンサンブル降水予測情報を活用したダム利水操作とその効果の比較

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タイトル別名
  • Real-time reservoir operation for water supply consiedering operational ensemble forecasts of precipitation

抄録

渇水管理を目的としたダム貯水池の長期利水操作においては,渇水が比較的長期間にわたって継続する少雨によって引き起こされることから,長期の将来にわたる流域の気象・水文状態に関する予測情報を考慮することは効果的であると考えられる.しかし,一般に予測リードタイムが長くなるほど予測の信頼性が低下する傾向にあり,将来の状態を確定的に予測することが困難になる.こうした状況に対応するため,近年,解析誤差程度の微小なばらつきを人工的に持たせた複数の初期値からそれぞれ予測系列を発生させ,それらを総合的に評価することによって,決定論的な予測の精度低下を補おうとするアンサンブル予測技術が,現業気象予報に取り入れられてきている.本研究では,気象庁から提供されている現業アンサンブル気象予報のうち,特に渇水管理の上で有益と期待される週間アンサンブル予報と1か月アンサンブル予報の降水量予測値を利用したダム利水操作モデルを構築し,これらの予報を利用する効果について比較検討を行った.具体的には,192時間先(8日間先)までの予測値については,最新の週間アンサンブル予報を利用し,それ以降の予測については1か月アンサンブル予報を参照した.こうして得られた降水量のアンサンブル予測系列を,回帰式によりダム流入量および河川流量に変換し,1か月先までのアンサンブル流量予測系列が得られる.得られた流量予測系列を考慮しながら,1か月先までの渇水被害を最小化するよう,確率動的計画法によって日別放流戦略を決定し,放流戦略に従ったダム操作を行った.週間予報または1か月予報が更新されるたびに最適放流計算を再度行い,新たな予測状況を踏まえた操作を実施するものとした.なお,渇水被害指標としては,(不足流量の2乗)/(需要量)を採用した.吉野川水系早明浦ダムの利水操作を対象に適用を行った結果,週間予報を考慮した場合には操作精度が改善したものの,1か月予報については,降水量予測情報の予測精度によっては操作精度の改善が見られない場合があった.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688879232
  • NII論文ID
    130005481989
  • DOI
    10.11520/jshwr.27.0_100046
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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