ザラフシャン川上流新設ダムの効果的な運用に関する検討

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  • Projection of Available Water Resources in Zaravshan River Basin under future climate

抄録

21世紀は水の世紀であると言われるように、世界の各地で水問題が様々な社会問題の一部として顕在化してきている。中央アジアでは、ザラフシャン川の水資源を巡り、上流国のタジキスタンと下流国のウズベキスタンとの間で緊張感が高まっている。そこで本研究では、ザラフシャン川上流に新設予定であるダムの運用に対する検討を行った.先行研究では峠らがアラル海の縮小における再現解析に成功しており,本研究はさらに細かな対象において水収支を再現することを目指すとともに,新設ダムの効果的な運用について考えた.本研究では陸面過程モデルSiBUCを用いて解析をおこなった.ウズベキスタンでは灌漑地が多く,このモデルは灌漑地における灌漑必要水量も考慮できることから本研究に有効であると考えられる.今回の解析は1961年から2000年までの40年間で行い,解像度は5kmに設定した.また,MRI-AGCM3.2Sによる解析もおこなった.先行研究では,気象データ内挿時に標高に応じて気温と気圧のみが補正されていた.しかし, 気温に伴って下向き長波放射の値も変化することが予想され, アラルでは標高が高い地域で融雪が春先に急激に発生しており, 熱収支が供給過多となっていると思われる結果が出ていた.  ダム操作は,上流側で冬季に最大となる水力発電需要,下流側で夏季に最大となる灌漑需要に基づいて検討した.まず水力発電需要は,建設される予定のダムの最大出力量の放流量に基づいて推定した.夏期の灌漑水需要量は,SiBUCによる陸面解析によりDupli地点より下流側の灌漑必要水量を推定した. 本研究は中央アジアの氷河の融雪過程の再現を長波放射の補正を行うことで精度をあげることができたが,今後さらに細かいダムの操作を考えるにあたって夏場に流量のピークがある実測値と合わす必要がある. 今回のGCMによる解析によって将来気候ではダム地点の流入量が増加しており,上流国の発電用放流量と下流国の灌漑用放流量の双方の需要を満たすダム操作ができることを示せた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688894080
  • NII論文ID
    130005481997
  • DOI
    10.11520/jshwr.27.0_100053
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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