北部九州における冬季降水量増加のための層雲への液体炭酸撒布実験

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Low level horizontal penetration seeding of super cooled stratus with liquid carbon dioxide for enhancing winter-time precipitation in Northern-Kyushu,Japan

抄録

1.はじめに 頻繁に干ばつ(渇水)が発生する北部九州に位置する九州大学では,1999年2月からは冬季積雲を対象にした液体炭酸を用いた新人工降雨実験(福田,1999)を行っている.今回初めて冬季積雲ではなく冬季層雲への液体炭酸撒布実験に成功したので,結果を報告する.2,層雲への液体炭酸撒布実験(2013年12月26日) 実験当日は朝鮮半島に弱い低気圧があり,日本列島は弱い冬型で,地上気温は7.3℃,地上付近の風は弱い西南西の風,上空850hPaから700hPaにかけては西南西から南西の風が吹いていた(図1,2,3).雲は下層,中層,高層と3層存在し,液体炭酸を雲底高度1500m(気温2.8℃),雲頂高度3200m(気温-7.0℃),厚さ1700mの比較的厚い中層の層状雲に3回撒布した.1回目は,佐賀県唐津市沖を南南東から北北西へ,高度2480m(-2.1℃)付近で,13時35分20秒から13時37分20秒(120秒間).2回目は,1回目とほぼ同じコ-スで唐津市沖を南南東から北北西へ,高度2650m(-4.1℃)付近で,13時38分37秒から13時40分37秒(120秒間).3回目は,唐津市付近を西から東に,高度2596m(-3.3℃)付近で,13時42分15秒から13時44分15秒(120秒間)であった.撒布率は,各々11.1g/sであった(図4).3.実験結果および考察 3回の実験後,航空機からの観測,レ-ダ-エコ-の追跡および地上の降水観測を実施した.その結果,次のような事項が判明した. 1)航空機からの観察の結果,液体炭酸を撒布した領域での雲の盛り上がりが確認できた. 2)地上での降水が確認された. 3)実験を実施した雲が中層の雲であったため,上層の雲に遮られ,気象衛星から,はっきりと人工雲の変化は確認出来なかった. 4)実験後すぐには,レ-ダ-エコ-の追跡は,降雨強度が非常に弱く,困難であった.しかし,撒布後45分(1430JST)に弱いエコ-が志賀島上空付近に発生,その後,南南西の風にのり,宗像市,北九州市へと面積を拡大させながら移動し,発生後約1時間(1520JST)で消滅したことが確認できた(図5a,b,c,d,e,f,g). これらの結果から,北部九州での冬季層雲での液体炭酸人工降雨実験は初めてであったが,成功したと考えられる.   

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680688999296
  • NII論文ID
    130005482037
  • DOI
    10.11520/jshwr.27.0_100086
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ