釧路川の蛇行復元に伴う地下水位の変動について

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タイトル別名
  • Research on changes in groundwater level due to meandering restoration of Kushiro River

抄録

  北海道の東部に位置する釧路湿原では,近年湿原面積が急激に減少し,湿原植生がヨシ群落からハンノキ林へ変遷する環境変化が問題となっている.ハンノキ林拡大の原因の一つとして地下水位の低下が考えられており,本研究では釧路湿原の辺縁部に位置する旧川復元工事を行った茅沼地区を解析対象とし,流路変更による地下水位の変動と植生変化との関係を把握することを目的とする.<br>   茅沼地区は度々起こる洪水被害を軽減させる目的で1949年~1984年に直線改修工事が行われたが,その結果湿原特有の希少な魚類の生息の場が減少し,周辺のヨシ群落などの湿原植生がハンノキ林に変遷した.これらの環境を改善するため2006年から茅沼地区において釧路湿原中心部への土砂流入の抑制や地下水位の上昇,湿原植生の再生を目的とした旧川復元工事を実施した.約1.6㎞の直線河道を当時の地盤高まで埋め戻し,近傍の蛇行している旧川に流路変更した.工事は2010年2月に直線河道から旧川に通水を完了し,2011年3月に竣工した.<br>   本研究の対象期間は2005年~2014年とし,北海道開発局釧路開発建設部の茅沼地区に設置している既存の観測地点での地下水位観測データを用いて,植物が最も生長するであろう5月~9月の旧川復元工事前後の地下水位がどのように変化しているかを探るため月平均相対水位を調べた.<br>   復元前後の4年間で5月~9月の月平均相対水位比較すると,復元地区下流部に位置する観測地点の相対水位は減少しているが,上流部の観測地点では相対水位が0.1m~0.2m上昇していることが分かる.そこで復元地区の上流部の観測地点付近に着目すると,復元工事後の河道水位のせき上げ効果により直線河道から旧川に切り替わる付近において地下水位も連動して上昇していると考えられ地下水位の上昇が認められた.そこで河道整正工事等改変の影響のない箇所でハンノキ林の減少を空中写真で確認したところ復元前では河道付近にハンノキ林が繁茂しているのに対し,復元後ではハンノキ林が減少しているのが確認できた.このことから,復元地区の上流部にかけてハンノキ林の樹高生長を抑制する環境に変化しつつあると考えられる.今後,地下水位と植生変遷の因果関係はより精査する必要がある.<br><br> <br><br> 

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680689377024
  • NII論文ID
    130005176191
  • DOI
    10.11520/jshwr.29.0_97
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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