黒毛和種牛の分娩後早期定時人工授精における処置開始方法が卵胞発育,受胎性に及ぼす影響

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タイトル別名
  • Effect of follicular aspiration or GnRH injection at the onset of timed artificial insemination protocol on the follicular growth and fertility in early postpartum Japanese Black cows

抄録

【目的】分娩後早期の黒毛和種牛に、腟内留置型プロジェステロン製剤(PRID)を併用した定時人工授精(TAI)処置を開始する際、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)投与あるいは卵胞吸引を行って、その後の卵巣反応を検討した。【方法】供試牛は黒毛和種牛18頭(1~5産)で、分娩後21~30日の早期に試験を開始する際、GnRH(酢酸フェリチレリンとして100µg)を筋肉内投与したものをGnRH群(n=9)、経腟的に直径約3mm以上の卵胞を吸引除去したものを卵胞吸引群(n=9)とした。処置開始からPRIDを7日間装着し、抜去時にPGF(クロプロステノールとして500μg)を筋肉内投与した。抜去後48時間にGnRH(100µg)を投与し、その18時間後にTAIを、TAI後26日前後で超音波による妊娠診断を行った。各処置時に卵巣を観察し、同時に採取した血漿により後日エストラジオール-17β(E2)およびプロジェステロン(P)濃度を測定した。【結果】GnRH群における卵巣反応は、処置開始時にみられた大卵胞が排卵し黄体を形成した誘起排卵区(4/9)と、大卵胞が退行して黄体を形成しなかった退行区(5/9)に分かれた。TAI前日における優勢卵胞の直径は、GnRH群誘起排卵区(1.44 cm)が、退行区(1.13 cm)よりも有意に大きく(P=0.038)、卵胞吸引群(1.26 cm)はその中間の値であった。E2濃度もGnRH群誘起排卵区(4.01 pg/ml)が最も高く、次いで卵胞吸引群(2.71 pg/ml)、GnRH群退行区(1.53 pg/ml)の順となり、卵胞吸引群は退行区よりも有意に高かった(P=0.021)。排卵同期化率はGnRH群誘起排卵区で1頭に排卵遅延がみられ75.0%、退行区および卵胞吸引群では100%であった。血中P濃度の消長に差はみられなかった。受胎率はGnRH群誘起排卵区で50.0%、退行区で20.0%、卵胞吸引群で55.6%であった。以上の結果から、前処置のGnRH投与により誘起排卵したものでは、優勢卵胞の発育がよく受胎率も高かったが、退行したものでは受胎率が低い傾向がみられた。また、卵胞を吸引除去したものでは卵巣反応が安定しており,受胎率が高いことが示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680690674944
  • NII論文ID
    130007022306
  • DOI
    10.14882/jrds.102.0.212.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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