ニューロキニンB作動薬の末梢投与は黒毛和種雌ウシの黄体形成ホルモン分泌および卵胞発育を促進する

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抄録

【目的】多くの哺乳類の視床下部弓状核において,ニューロキニンB(NKB),ダイノルフィンAおよびキスペプチンが共存する「KNDyニューロン」とよばれるニューロン群が発見され,GnRH/LH分泌を制御していると考えられている。本研究では,成熟雌ウシを用いて,NKB受容体(NK3R)作動薬(senktide)を持続投与し,NK3Rの活性化がLHおよびFSH分泌と,卵胞発育におよぼす影響を検討した。【方法】実験には発情周期を回帰する黒毛和種成熟雌ウシを用いた。動物にPGFを投与して黄体退行を誘起したのち,排卵を確認した日をDay 0とした。Day 3に,あらかじめ頸静脈に留置したカニューレを通じて,senktide溶液(高用量,300 nmol/ml/min,n=4;低用量,30 nmol/ml/min,n=4)または溶媒(0.25 %DMSO含有生理食塩水,n=4)を流速1.0 ml/minで2時間投与した。投与開始前8時間から,反対側の頚静脈に留置したカニューレを通じて10分間隔24時間の採血を行い,血中LHおよびFSH濃度の変化を調べた。また,超音波画像診断装置を用いて,第1卵胞発育波主席卵胞の直径を,投与開始直前から投与開始後48時間まで8時間おきに測定した。【結果および考察】Senktide高用量投与群では,投与開始直後より血中LH濃度が徐々に上昇した。投与開始から8時間までのLH分泌曲線下面積(AUC)は投与前8時間のAUCと比較して有意に増加した。一方,senktide低用量投与群では,LH分泌動態に変化はみられなかった。また,senktideの投与はFSH分泌に顕著な影響をおよぼさなかった。Senktide低用量投与群における主席卵胞の成長曲線は溶媒投与群とほぼ同様に推移したが,senktide高用量投与群における主席卵胞直径は投与開始後24時間以降に溶媒投与群と比較して有意に高い値を示した。これらの結果から,NK3Rの活性化は一過性のLH分泌の増加を誘起することで,ウシ卵巣における卵胞発育を促進することが示唆された。本研究は委託プロジェクト研究「ゲノム情報を活用した家畜の革新的な育種・繁殖・疾病予防技術の開発」(REP2005)の一部として実施した。

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  • CRID
    1390282680691610240
  • NII論文ID
    130005475109
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_p-1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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