性周期回帰ラット黄体の形態的退行におけるautotaxin(ATX)の組織 リモデリング調節作用

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ATXが示すlysoPLD活性は,PLA2活性と連関して,リゾホスファチジン酸(LPA)を産生し,この生理活性脂質は細胞の増殖や運動性の亢進などの機能を持つ。本研究では,性周期回帰ラットの卵巣におけるATX-LPA系の発現と働きを調べた。ATXの発現は機能化しなかった約4世代(stage 1-4)の黄体に特異的に見られ,新しい黄体ほど発現が弱く古い黄体ほど増強した。LPA受容体(LPA1-4)のうち,LPA4がstage 2または3の線維芽細胞や空胞が増えつつある黄体に多く発現し,少なくとも黄体自身がLPAの作用部位であることが示唆された。さらにこのLPA4は,それぞれマクロファージ(Mφ)と好中球のマーカーであるCD68とMPOの反応の局在と類似していた。続いて卵巣嚢内にATXの阻害薬やLPAを投与し,貪食細胞の誘引と線維芽細胞の増殖についてはBrdUの取り込み能への影響を検討した。通常の卵巣で,組織学的に健常な黄体細胞で占められるstage 1の黄体では,単位面積当たりの好中球とMφの数も少ないが,細胞死を含む炎症様の像が見られるstage 2ではその部位に集簇し数も約2倍に増えた。以後,炎症様変化の収束と結合組織への改変に伴い,しだいに貪食細胞の数も減少して行った。抗ATX抗体と化学阻害薬S32826によりstage 1での好中球が増加し,LPCやLPAの投与で減少した。後者の効果はstage 2や3でも見られた。一方Mφに対しては,抗体や阻害薬の投与もLPC/LPAの投与もstageを通して減少させた。線維芽細胞の増殖は,対照群においてstage 4で有意に増加した。ATX抗体や阻害薬の投与はstageが進むにつれ顕著な抑制効果を示し,LPA投与はstage 4を除いて有意に増加させた。以上の成績より,形態的退行中の黄体では,ATX-LPA系が好中球とMφの浸潤の調節と線維芽細胞の増殖刺激を通して,瘢痕組織へのリモデリングを促進していることが示唆された。

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  • CRID
    1390282680691617152
  • NII論文ID
    130005475114
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or2-7
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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