アカキツネ(Vulpes vulpes)における頚管粘液電気伝導度の推移を指標とした複数回交配後の分娩率について

Description

【目的】キツネは単発情動物であり,その発情徴候を人為的にとらえることは非常に困難である。そこで,キツネの飼育条件下における安定的な繁殖性を得る目的で,頚管粘液電気伝導度測定器を用いて計測した頚管粘液電気伝導度(mS/cm)の推移を指標として,2~3回の自然交配あるいは凍結精液を用いた人工授精後の繁殖状況について検討した。【方法】1~4歳のアカギツネ50頭を用いて,2014年の1月末から3月上旬に実験を行った。キツネは個体ごとにケージで飼育した。電気伝導度の測定には犬用DRAMNSKI排卵測定器を用いた。測定に際してはキツネを無麻酔下で逆位に保定し,外陰部を消毒した後に,測定電極を約10cm腟内に挿入して2回計測した。雌が雄を許容するかどうかは,ペアリング後約10分間の行動観察で判定した。交配は無発情期の頚管電気伝導度のベースラインから値が上にある場合は2~3回の自然交配あるいは凍結精液を用いた人工授精を実施した。妊娠日数は,交配日をDay0として算出した。分娩日は子ギツネの鳴き声で特定した。飼料は凍結魚肉,凍結馬・牛肉とドッグフードを等量に混和したものに,ミネラルとビタミンの添加剤を加えて,1日1回,300~500 gを給与した。【結果と考察】電気伝導度は無発情期に平均177±21 mS/cmであったものが,発情前期に253±32 mS/cm,雄を許容した発情期には539±103 mS/cmに急激増した。50頭中交配が可能であった交配率は86%(43/50),妊娠率は82%(35/43),産子数は平均4.0頭(1~6頭,分娩後30日目の離乳に至った10頭の平均)であった。2008年~2010年にかけて同様の電気伝導度を指標として実施した1回交配の交配率54%,妊娠率67%,産子数は平均4.3頭であった。以上の結果,頚管粘液電気伝導度を指標とした複数回の交配は,高い受胎性をもたらすことが示された。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691645184
  • NII Article ID
    130005475122
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_p-105
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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