水・耐凍剤チャンネルおよび不凍タンパクの発現によるゼブラフィッシュStageIII卵子の耐凍性向上の試み

DOI

抄録

【目的】魚類卵子の凍結保存は未だ成功していない。哺乳動物卵子に比べて体積が大きく脱水や耐凍剤の浸透に時間を要し,細胞内氷晶が形成されやすいためだと考えられる。もし,細胞膜の透過性を向上させたり,細胞内氷晶形成を抑制することができれば,魚類卵子の凍結保存が可能になるかもしれない。本研究では,体外成熟が可能なゼブラフィッシュのStageIII卵子に水・耐凍剤チャンネルおよび不凍タンパク (AFP)を人為的に発現させることによって,凍結保存が可能かどうかをしらべた。【材料および方法】成熟雌ゼブラフィッシュの卵巣からStageIII卵子を採取した。《実験1》水・耐凍剤チャンネルの1つであるアクアポリン(AQP) 3あるいはウィンターフラウンダー由来のAFPのcRNAを注入して12時間培養した。cRNA注入卵子を 25℃のスクロースあるいはプロピレングリコール(PG)を添加した90% LM液 (pH 9.0)に10分間浸し,その体積変化から水・耐凍剤透過性の向上をしらべた。また,卵子の細胞質画分の氷点降下からAFPの発現をしらべた。《実験2》AQP3およびAFPを発現させた卵子を25℃の15% (v/v)PGと15% (v/v)メタノールを添加した90% LM液に浸し,ストローを用いてガラス化凍結した。25℃の水中で融解した後,卵子の形態と生死染色により生存性をしらべた。【結果および考察】《実験1》無処理卵子と比較して,AQP3 cRNA注入卵子では透過性が有意に向上し,AFP cRNA注入卵子では氷点が有意に低下したことから,AQP3もAFPも卵子で発現していることが確認された。《実験2》無処理卵子は融解直後にすべて死滅したのに対し,AQP3とAFP両方を発現させた卵子では,融解直後の生存率は有意に向上した。しかしながら,1時間培養後はすべての卵子が死滅していた。以上の結果から,魚類卵子に水・耐凍剤チャンネルやAFPを人為的に発現させることで,耐凍性をある程度向上させることができることがわかった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691660672
  • NII論文ID
    130005051126
  • DOI
    10.14882/jrds.106.0.p-121.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ