凍結乾燥したウシ線維芽細胞の特性および核移植後の発生能

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抄録

【目的】我々は,絶滅が危惧されている褐毛和種高知系のクローン技術と凍結乾燥技術を組み合わせた保存・再生を試みている。本研究では,まずウシ線維芽細胞の凍結乾燥前後における細胞内の総タンパク質量,γ-チューブリン数,ミトコンドリア膜電位,DNA損傷細胞数,および透過型電子顕微鏡(TEM)像の比較をおこなった。次に,凍結乾燥細胞が体外発生能を維持しているのかどうかをウシ除核未受精卵子への核移植によって評価した。さらに,受胚雌牛への胚移植をおこないその体内発生能を検討した。【方法】ウシ線維芽細胞の凍結乾燥前後の総タンパク質量,γ-チューブリン数およびミトコンドリア膜電位は,それぞれBradford法,蛍光免疫染色,およびJC-1染色によって計測した。DNA損傷細胞数はコメットアッセイ法によって評価した。また,凍結乾燥前後の細胞内部構造はTEMによって観察した。核移植には培養細胞および凍結乾燥後-30℃で1週間保存した細胞を供試し,それぞれウシ除核未受精卵に注入し,38.5℃,5% CO2,5% O2の気相下で7日間培養した。発生した胚盤胞の一部は受胚牛への胚移植を行い,胚移植後60日目に妊娠鑑定を実施した。【結果】凍結乾燥前の線維芽細胞と比較して凍結乾燥後の細胞では,総タンパク質量およびγ-チューブリン数が減少し,ミトコンドリア膜電位は認められなかった。DNA損傷細胞の割合は,培養細胞では1%,凍結乾燥直後では2%となり有意な差は認められなかった(P>0.05)。TEM観察の結果,凍結乾燥後,細胞膜の損傷およびミトコンドリアの収縮等が確認されたが,核膜および核の形態は正常であった。凍結乾燥細胞および培養細胞を核移植したときの卵割率は52%および50%,胚盤胞発生率は14%および25%となり,卵割率および胚盤胞発生率に有意な差は認められなかった(P>0.05)。4個の凍結乾燥体細胞由来胚盤胞を受胚牛4頭に胚移植したが,受胎は確認できなかった。今後は,核移植胚の体内発生能を向上させ,クローン作出を目指す予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691713152
  • NII論文ID
    130005475149
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or1-22
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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