吸乳刺激によるキスペプチン遺伝子発現抑制を仲介するTIP39-SST系の可能性

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抄録

泌乳期における黄体形成ホルモン (LH) パルスの抑制は,弓状核 (ARC) において吸乳刺激によるキスペプチン遺伝子 (Kiss1) 発現が抑制されることに起因する。本研究は,吸乳刺激がKiss1発現抑制に至る経路の探索を目的とした。泌乳期のラットにおいて後部視床髄板内核群 (PIL)におけるtuberoinfundibular peptide of 39 amino acids (TIP39) のmRNAレベルの増加が報告されている。またTIP39受容体として示唆されている副甲状腺ホルモン2受容体 (PTH2R)のmRNAの発現が,ARCのソマトスタチン (SST) ニューロンにおいて確認されている。本研究では,TIP39-SST系を介して泌乳期のKiss1発現抑制ひいてはLH分泌抑制が起こるという仮説を立て,ARCにおけるキスペプチン,PTH2R,SSTおよびその受容体であるSST受容体1~5(SSTR1~5)の遺伝子発現への吸乳刺激の影響について検討した。出産後の雌ラットを,産後1日目に仔を8匹に調整および全て外した泌乳群および非泌乳群の2群に分けた。産後2日目に卵巣除去を施し,産後8日目に断頭し,弓状核−正中隆起 (ARC-ME) 領域よりcDNAを作製し, 定量PCRを用いて上記遺伝子発現量を2群間で比較した。その結果, 泌乳群のKiss1発現量が非泌乳群に比べて優位に低かった。またSST遺伝子の発現量には有意差はなかったものの約2倍と高い傾向を示した。泌乳群においてPTH2RおよびSSTR2の遺伝子発現量が非泌乳群に比して有意に高かった。本研究の結果から,吸乳刺激は,ARCに投射するTIP39を介して,SSTを活性化する可能性が示唆された。SSTRは抑制性のGi受容体であることから,吸乳刺激はTIP39-SST系を介してKiss1発現の抑制ひいてはLH分泌の抑制に関与する可能性が示唆された。

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  • CRID
    1390282680691743744
  • NII論文ID
    130005475173
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_or2-11
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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