マウス精子の冷蔵輸送および体外受精法の開発

書誌事項

タイトル別名
  • Effect of preservation medium on fertility of cold-stored mouse sperm

説明

【目的】近年, 多くの遺伝子改変マウスが、国内外の研究施設間で輸送されている。マウスを輸送する有用な手段として, 精巣上体尾部の冷蔵輸送がある。マウス精子は, 冷蔵環境下において48時間まで受精能を維持できるが, 48時間以降は, 顕著に受精能が低下する。この輸送時間の制約が, 精巣上体尾部の冷蔵輸送における技術的な問題となっている。そこで本研究では, 精子の冷蔵保存培地および体外受精法を改良することにより, マウス精子の冷蔵保存および体外受精法の確立を試みた。【方法】卵子および精子は, C57BL/6マウスの成熟雌および雄マウスから採取した。精巣上体尾部を流動パラフィン (Nacalai Tesque Inc), M2 medium (Sigma), CPS-1 (Cell Science and Technology Institute Inc)またはLifor (Lifeblood Medical Inc)中で, 72時間冷蔵保存し, 体外受精により精子の受精能を評価した。次に, Liforで72時間冷蔵保存した精子を用いて, 各種濃度のGSH(0, 0.5, 1.0, 1.5または2.0 mM)を添加した体外受精培地 (HTF) が, 受精能に及ぼす影響を検討した。最後に, 旭川医科大学から当研究室へ冷蔵輸送された精子を用いて体外受精を行い, 冷蔵輸送された精子の受精能および得られた胚の発生能を評価した。【結果】各種冷蔵保存液の中で, Liforで保存された精子が最も高い受精率を示した(流動パラフィン: 26.5%, M2 medium: 17.1%, CPS-1: 19.6%, Lifor: 59.8%)。体外受精培地へのGSHの添加は, 冷蔵精子を用いた体外受精の受精率が顕著に向上させた(0 mM: 48.0% vs. 1.0 mM: 89.8%)。精子の冷蔵輸送試験では, 冷蔵輸送された精子からも高い受精率が得られた。さらに, 得られた胚は, 正常に産子へと発生した。以上, 本知見は, 精子の冷蔵保存および体外受精技術を確立し, 遺伝子改変マウスの簡便な輸送技術として利用されることが期待できる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691917184
  • NII論文ID
    130005457667
  • DOI
    10.14882/jrds.105.0_139
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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