piggyBacトランスポゾンを用いたリプログラミング因子導入による ウシ羊膜細胞からの栄養膜細胞株樹立の試み

説明

【目的】栄養膜細胞は胚発生で起こる最初の細胞分化により作り出される細胞であり,着床や胎盤形成に重要な役割を担っている。マウスやヒトでは着床初期の研究は盛んに行われているが,ウシでは胚発生および着床・妊娠プロセスは大きく異なっていることもあり,未だ不明瞭な部分も多い。さらに,ウシではこれらの研究を進める上で有用と思われる,栄養膜幹細胞株の報告はなく,それから派生する細胞系譜の細胞株の種類も少ない。本研究では,ウシの羊膜細胞から人工栄養膜細胞(induced trophoblast cells; iTB細胞)の樹立を試みた。【方法】妊娠50日齢の胎仔から採取した羊膜細胞に,Oct3/4Sox2Klf4およびc−Mycの転写因子を,piggyBacトランスポゾンベクターを用いて導入した。このベクターには,ドキシサイクリン(Dox)添加の有無によって,導入した転写因子の発現が制御できるシステムを組み込んだ。Doxの添加から4日後,遺伝子導入後の細胞をフィーダー細胞上へと移し,10%のFBSを含む培地で培養を行った。【結果】Doxの添加から2週間後,上皮細胞様で敷石状の形態を示すコロニーが出現した。このコロニーは,その細胞形態を維持したまま40回以上継代を行うことができた。得られた細胞株は,幹細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を部分的に示していた。また,栄養膜細胞関連遺伝子(CDX2ESRRβIFNτ)を発現していた。さらに,低接着ディッシュ上で数日間浮遊培養し,分化を促すと栄養膜小胞(Trophoblastic vesicle)様の胞状球体および二核細胞の形成が認められた。これらの結果から,羊膜細胞にリプログラミング因子を発現させることにより,人工的に栄養膜細胞株を得ることが可能になった。得られた細胞株は,ウシの着床・妊娠プロセスにおける栄養膜細胞の機能や細胞分化の研究のための有用なツールとなると考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691975424
  • NII論文ID
    130005475101
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_p-20
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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