摂食と生殖の制御に関わる脳内ケトン体センサー細胞

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Ketone body-sensing cells in the lower brain stem to regulate food intake and reproductive functions

抄録

【目的】ケトン体は,エネルギー欠乏時に産生され,抹消あるいは脳内の細胞でエネルギー基質となる。本研究グループはケトン体の第4脳室(4V)内投与により,黄体形成ホルモンのパルス状分泌が抑制され,摂食が誘起されることを明らかにした。このことから,ケトン体が負のエネルギーシグナルとして,血糖など他のエネルギー基質とともに4V上衣細胞に感知されるという仮説を提唱している。実際,免疫組織化学的には4V上衣細胞にはmonocarboxylate transporter(MCT1)が存在していることも明らかにした。本研究では,この仮説を証明するため,in vitroで培養した4V上衣細胞がケトン体に反応するかどうかを細胞内カルシウム濃度[Ca2+]iを指標に検討した。【方法】無処置のWistar-Imamichi系雄ラットの脳から上衣細胞を含む4V壁を採取し,培養皿に接着させた初代培養細胞について検討した。培養液中にケトン体である3-hydroxybutylate(3HB)を25mMになるよう溶解し,細胞を表層還流しながらfura-2の蛍光により,[Ca2+]iを測定した。また,3HBによる[Ca2+]iの変化がMCT1を介しているか確かめるため,MCT1の阻害剤であるα-Cyano-4-hydroxycinnamic acidを培養液中に投与した。実験終了後には,観察した細胞が上衣細胞であるかを上衣細胞のマーカーであるvimentinの蛍光免疫染色により確認した。【結果】一部の4V上衣細胞において,3HBによる[Ca2+]iの上昇が見られた。また,3HBによる[Ca2+]iの上昇は,MCT1の阻害剤により抑制された。以上,4Vを裏打ちしている上衣細胞がケトン体を感知していること,その過程にはMCT1をはじめとするMCTが関与していることが明らかとなった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680691999360
  • NII論文ID
    130007023704
  • DOI
    10.14882/jrds.98.0.78.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ