泌乳ラットにおける黄体形成ホルモン分泌抑制は弓状核-正中隆起領域のメタスチン-GPR54系の抑制に起因する

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  • Suppression of LH secretion is caused by inhibition of metastin-GPR54 signaling in the arcuate nucleus-median eminence in the lactating rat

抄録

我々は泌乳ラットをモデルとして用い,乳仔からの吸乳刺激によるパルス状黄体形成ホルモン(LH)分泌の著しい抑制によって,泌乳期には卵胞発育および排卵が抑制されることを示した。しかしながら,このLH分泌抑制の神経内分泌機構の詳細は明らかとなっていない。近年,GPR54の内因性リガンドとして同定され,KiSS-1遺伝子から翻訳されるメタスチンが視床下部弓状核(ARC)及び前腹側室周囲核(AVPV)に局在する事,またLH分泌を強力に促進する事が明らかとなった。そこで本研究では,泌乳期のLHパルスの抑制が,脳内におけるメタスチン-GPR54系の抑制に起因するか否かを明らかにすることを目的とし実験を行った。Wistar-Imamichi系雌ラットを用い,分娩後1日目に乳仔を8匹(泌乳群)もしくは0匹(非泌乳群)に調節した。分娩後8日目にARC-正中隆起 (ARC-ME) およびAVPVを採取し,KiSS-1およびGPR54 mRNAの発現量をReal-time RT-PCRにより調べたところ,泌乳ラットのARC-MEにおけるKiSS-1 mRNA発現量は,非泌乳ラットに比べ著しく抑制され,有意に低い値を示した。さらに,非泌乳ラットのARCには多数のメタスチン免疫陽性細胞が認められたが,泌乳ラットでは殆ど認められなかった。一方,AVPVにおけるKiSS-1 mRNA発現及び,メタスチン免疫陽性細胞は両群ともに殆ど認められなかった。これらの結果より,吸乳刺激がARCにおけるKiSS-1 mRNA及びメタスチンの発現を部位特異的に抑制する事が明らかとなった。また,両群のラットの第3脳室にメタスチンを投与したところ,両群ともに血中LH濃度の急激な上昇が見られた事から,泌乳期でもメタスチンに対するLH分泌の反応性は失われていない事が明らかとなった。以上より,泌乳ラットにおけるパルス状LH分泌の抑制は,吸乳刺激によるARCのKiSS-1 mRNA/メタスチン発現の顕著な抑制に起因することが強く示唆された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680692039552
  • NII論文ID
    130007023735
  • DOI
    10.14882/jrds.99.0.10.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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