新生児期エストロジェンにより発現が変化する視床下部内遺伝子の網羅的解析

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抄録

【目的】哺乳類の内分泌機構や行動には性差があり,黄体形成ホルモンサージや性行動の中枢には不可逆的な性差がみられる。哺乳動物のオスでは発達期のエストロジェンの作用によりオス型の表現型を示す。本研究では新生児オス脳において発達期エストロジェン誘導性に変化する遺伝子を網羅的に解析することを目指した。 【方法】出生直後の新生雌ラットの皮下にエストラジオールベンゾエート (EB) 投与の1,3,6,12,および24時間後に視床下部組織片を採取し,EB処置により発現が変化する遺伝子群をマイクロアレイ法により解析した。EBにより発現が増加した遺伝子群と発現が減少した遺伝子群の,2つの遺伝子群に分類した。発現減少を示した4遺伝子の雌雄それぞれ視床下部における発現を半定量RT-PCRにより確認した。 【結果および考察】エストロジェンにより1/2倍以下の発現減少を示した遺伝子はEB投与後3時間と24時間をピークとし,それぞれ100種類以上存在した。2倍以上の発現増加を示した遺伝子はEB投与後のいずれの時間においても定常的に約50種類の遺伝子の発現が認められた。発現減少を示した4遺伝子 (Ptgds, Hcrt, Tmed2, Nedd4) について発達期脳内における雌雄差を確認するために,半定量RT-PCR法を行った結果,雌に比べて雄で有意に低い発現が認められた。これら4つの遺伝子のうち,ptgdsHcrtは神経細胞の保護作用を有することが報告されている。よって,オスでは,発達期のエストロジェン感作によりPtgdsおよびHcrtのニューロン保護作用を失うことで不可逆的な脳の性差を形成する可能性が考えられた。残りの2遺伝子についてはニューロンの細胞死や保護作用などに関連する報告がなく,未知の機能により脳を性分化させるエストロジェンの作用を仲介していることが予想された。以上,本研究の結果により,脳に性差をもたらすエストロジェンの作用を仲介する遺伝子の候補として, Ptgds, Hcrt, Tmed2, Nedd4の4つの遺伝子を見出した。

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  • CRID
    1390282680692053888
  • NII論文ID
    130005475225
  • DOI
    10.14882/jrds.107.0_p-31
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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